*15:16JST ジャストプラ Research Memo(6):「Putmenu」は将来的に収益柱に育つ可能性
■今後の見通し

2. Putmenu事業の状況と今後の展開
ジャストプランニング<4287>は「まかせてネット」に続く新たな収益柱として、飲食店等の注文・会計待ち時間「0分」を実現するサービス「Putmenu」の事業拡大に注力している。販売ターゲットとしては、飲食店だけでなくショッピングモールやアウトレットモールのフードコート、各種イベント会場など注文や決済等で行列の発生しやすい場所のほか、外国人利用客の多いホテルや観光地等が挙げられる。
また、事前注文を可能とすることで食材の廃棄ロス削減効果が期待できる社内食堂でも導入されるなど、2018年の事業開始以降、様々な利用シーンで導入が広がっている。

(1) フードコート/スーパー
フードコート向けでは2018年1月より、イオンモール幕張新都心のフードコート内店舗「おひつごはん四六時中」に導入を開始したのを皮切りに、同年9月には新規オープンしたイオンスタイル仙台卸町のフードコート「杜のオアシス」(700席)に出店する11店舗に一斉導入した。また、同年11月には丸井グループ<8252>のショッピングモールであるモレラ岐阜のフードコート「FOOD GARDEN」(4店舗)の専用アプリ「モレラオーダー」としても採用されるなど、着々と導入が進んでいるほか、イオンカードやエポスカードとの連携も同時にスタートしており、利便性の向上も図っている。

「Putmenu」導入後の効果としては、混雑時の待ち時間解消により他のフードコートと比較して時間当たり注文件数が格段に増加したことが挙げられる。従来は物理的に1分当たり1件の注文処理が限界であり、注文のための行列ができれば利用客が他店舗に流れ売上機会ロスにつながることもあったが、「Putmenu」を利用すればこうした問題も解消されることになる。なお、これら顧客企業での横展開が進んでいないように見えるが、既存店舗においてはPOSレジシステムとの連携が必要でシステム改良費用が発生すること、また、2019年10月に予定されている消費増税や軽減税率導入に向けた対策が経営の優先課題となっていることが背景にある。
これら課題が解決されれば、フードコート向けの導入事例もさらに増えていくものと予想される。

その他、2018年11月には(株)ベイシアが運営するスーパーマーケット、ベイシア新座店で惣菜の事前注文・決済サービス「タッチdeデリカ」として「Putmenu」が採用された。当日1時間前から最大3日後まで、受け取り日時を指定して注文できるサービスで、指定時間になると自動でスマートフォンへの呼び出しプッシュ通知が届き、利用者は注文時に指定した時間に店舗に受け取りに向かい、できたてのお惣菜をすぐに受け取ることができる仕組みとなる。決済処理に関してはスマートフォンのGPS機能を使って20km圏内で可能となる。店舗側から見れば、受注生産が可能となり販売量の予測精度が高まることで、廃棄ロスの削減効果が期待できることになる。2019年3月には新たに出店した上尾平塚店でも導入されており、今後も新規店舗での導入拡大が期待される。


(2) イベント会場
「Putmenu」の導入先としてイベント会場も有力なターゲットとなる。2018年11月に第1弾として、男子プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツふなばし」のホームアリーナ「船橋アリーナ」のフードラウンジに導入された。バスケットボールの試合観戦では、ハーフタイム(15分間)内に観客も軽食やドリンクを購入するため、フードラウンジで行列に並ぶ必要(試合再開に間に合わない可能性)があったが、「Putmenu」を利用することで、観客席から商品を注文し、行列に並ぶことなく商品を購入できるようになる。「Putmenu」導入後のフードラウンジにおける売上げは25%以上アップし、顧客満足度も向上するなど想定以上の導入効果が出ている。

「Putmenu」で商品を購入した場合、サービス料として通常料金の8%を徴収しているが、それでもリピート率は80%を超えており、同サービスに対するニーズの大きさがうかがえる。今後はアリーナ内の物販店でも導入していく予定となっている。
また、こうした導入効果を見て他チーム、あるいは他のプロスポーツ競技運営会社からの引き合いも増えており、2020年1月期中にも新たな導入が進むと予想される。なお、船橋アリーナではビーコンを観客席のエリアごとに配置し、各エリアの購買データも収集している。対戦チームごとにデータを収集することで販売予測の精度が高まり、食材の調達量やスタッフ人員の最適化が可能となり、経営効率の向上につながると見ている。

なお、収益モデルとしてはサービス料金を運営会社とレベニューシェアする方式となり、流通額に比例して同社の収益も拡大する格好となる。

(3) 観光地
訪日外国人観光客が増加するなか、観光地での「街ごとキャッシュレス化」を実現するツールとして「Putmenu」の普及拡大が見込まれる。2018年11月に5省庁の後援を受けて観光促進を推進する「温泉総選挙」を運営する(株)ジャパンデザインと観光地のキャッシュレス化推進で連携していくことを発表したが、その第1弾として、妙高(新潟)の「街ごとキャッシュレス化」に取り組んでいく。


現地で観光地経営の舵取り役となっている(一社)妙高ツーリズムマネジメントと連携して、妙高に訪れる国内外の観光客に対して「Putmenu」のサービスを提供することで、利便性の向上と消費の活性化を図っていく。具体的には、エリア内のスキー場(リフト券やレンタルサービス、飲食店)やその周辺の飲食店、道の駅、各宿泊施設、交通機関等で「Putmenu」による注文・キャッシュレス決済を可能にする。訪日観光客にとっては「Putmenu」を利用することで、ストレスなく正確な情報を得ることができ、満足度の高い観光体験を得ることが可能となる。飲食店や宿泊施設等のサービス提供側から見れば、各国の言語に対応するために掛かっていた費用を削減できるほか、キャッシュレス決済により消費拡大も期待できることになる。また、街全体に設置されたビーコンやGPSを通じて、利用者の観光地での体験経路や消費動向等のデータを収集・分析し、観光地の更なる活性化につなげていくことも可能となる。同社は、妙高で毎年5月に実施される地方活性化イベント「艸原祭(そうげんさい)」※にて、「Putmenu」を活用して混雑緩和とキャッシュレスを推進し、利用者のサービス向上に取り組むことを発表している。


※池の平温泉のいもり池周辺で開催される、春の訪れを告げるお祭りで、毎年約2万人が来場する。伝統芸能等のステージイベントや屋台村の開設、フィナーレでは火文字と妙高山をバックにした花火が打ちあがる。


妙高での取り組みを発表して以降、他の観光自治体からの問い合わせも増えていることから、今後は各地のDMO※と連携した取り組みが広がっていくものと予想される。同社では2020 年 3月末までに 100ヶ所の 観光地での導入を目標としている。

※DMO(Destination Management Organization):地域の多様な関係者を巻き込みつつ、科学的アプローチを取り入れた観光地域づくりを行う舵取り役となる法人。


なお、収益モデルとしてはスキー場やイベント会場等では流通額の一定比率をレベニューシェアする方式となり、宿泊施設や飲食店舗等では月額固定料金制も検討している(顧客単価が異なるため、今後のデータ検証により最適化していく方針)。


(4) 社員食堂
2019年4月には医療・福祉関連サービスを展開する(株)光洋が運営する社員食堂「みんなの社員食堂」で「Putmenu」の運用を開始したことを発表している。光洋本社地区は工業団地内にあり、飲食店が少なく近隣企業も含めて「ランチ難民化」が大きな課題となっていた。光洋では「Putmenu」を導入することで、完全キャッシュレス化を実現し、現金の取扱いに関する人的コストを削減するほか、前日17時以降当日朝までの事前決済限定で割引を行うダイナミックプライシングを導入することで、食材の廃棄ロス削減にも取り組んでいく。また、当初は社員向けサービスとして開始するが、運用体制が確立されれば近隣地区の企業に限定して食堂を開放し、地域のランチ需要も取り込んでいく予定だ。なお、売上や勤怠、発注管理などは「まかせてネット」でサポートしていくことにしている。

さらに、光洋では子会社の(株)光洋フードサービスで全国の病院・施設内レストランへの飲食受託運営を行っており、これら施設への導入も連携して推進していく予定になっている。

そのほか、学生食堂からの引き合いも来ている。事前注文とキャッシュレス化により時間当たりの売上アップと人件費抑制、食材廃棄ロス削減効果が見込まれる。学生にとっても利便性向上につながるため、今後の普及拡大が期待される。

(5) その他
その他にも高速道路のSA/PAや各種イベント会場など混雑が予想される場所、観光バスの車内販売など様々な利用シーンでの導入拡大が期待される。2019年4月には新たにホテルのレンタルスマートフォンサービスとの連携も開始している。具体的には、ハウステンボス内の「変なホテル」全客室(200室)に備え付けられているスマートフォン「handy」(無料)に「Putmenu」のアプリを組み込み、宿泊客が同端末を用いてホテル内で販売しているお土産物等の注文・購入を可能とした。

「handy」はhi japan(株)が提供するサービスで、現在、国内ホテルの約3割に当たる1,700施設、24万室への導入が決定している。今回は「変なホテル」で「putmenu」のサービスを展開していたことがきっかけとなっており、他のホテルに横展開できるかどうかは未定だが、今回の取り組みによって成功事例(ホテルにおける物販売上の増加)ができれば、「putmenu」を導入するホテルも増える可能性がある。

また、海外市場への展開も見据えている。2019年1月にシンガポールで現地企業と業務提携を発表し、現在、ビーコンの電波免許取得手続き中となっているほか、その他東南アジアでも日系大手流通企業が展開するショッピングモール等で導入できるかどうか探索している段階にある。

(6) 営業・開発戦略
営業についてはリソースが限られるため、観光地での取り組みにおいてDMOと連携したように、それぞれのターゲット市場でネットワークを持つ協力企業と組むことで効率的に導入拡大を進めていく戦略となっている。また、開発面ではボクシーズで機能改善も含めた開発を進めていくほか、IoTにより収集したデータを活用するプロモーション支援サービスについても、今後、アドネットワーク企業など関連企業と協業しながら開発していく考えだ。特に、IoTを使ったデータ収集・活用の仕組みは類似サービスにはない強みとなるだけに、導入検討の際の優位点となる。

同社では2020年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、今後1年間が事業拡大に向けた好機になると見ており、広告宣伝費も含めて先行投資を積極的に投下していく計画としている。このため、収益化の時期としては早くとも2021年1月期以降となる。料金プランについては導入先によって固定制とレベニューシェアの2通りとなるが、仮に月額2.5万円とすると1,000店舗導入で年間売上高が3億円となる計算だ。レベニューシェア方式で同規模の売上高を獲得するには流通額で75億円程度(手数料率4%前提)が必要となる。2018年の訪日外国人の旅行消費額は約4兆5千億円となっており、今後、各市場において「Putmenu」の導入拡大が進めば、数年後には「まかせてネット」に並ぶ収益柱に育つものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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