*15:41JST カドカワ Research Memo(1):2021年3月期は市場環境の変化に対応した成長基盤の構築を目指す
■要約

KADOKAWAは、出版事業、映像・ゲーム事業、Webサービス事業等をグローバルに展開する総合エンターテインメント企業で、日本最大級の動画サービス「niconico」を運営する(株)ドワンゴやゲーム開発会社の(株)フロム・ソフトウェア、(株)スパイク・チュンソフトなどを傘下に持つ事業持株会社である。

1. 2020年3月期の業績概要
2020年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.9%減の204,653百万円と微減収となったものの、営業利益は同198.7%増の8,087百万円と大幅増益となった。
売上高については子会社だった(株)MAGES.が連結対象から外れた影響で約4,700百万円の減収要因となっており、同要因を除けば0.4%増収であった。また、営業利益については前期に事業構造改革を実施したドワンゴの収益が大きく改善したことが主要な増益要因となっている。なお、営業利益で会社計画(10,000百万円)の下振れ要因は、主に新型コロナウイルス感染症拡大(以下、新型コロナウイルス)の影響によるもので、2020年3月に公開した映画「Fukushima 50」の興行収入が計画を下回ったほか、イベントの中止やアニメ製作の延期によるメディアミックス作品の出荷延期等で、合計1,600百万円の下振れ要因となった。

2. 2021年3月期見通し
2021年3月期の業績予想については、新型コロナウイルス感染症拡大による影響等により不確実性が高いことから、現時点では未定とし、開示が可能となった段階で公表することとしている。現時点での影響としては、プラス要因として巣ごもり需要による各種デジタルコンテンツの販売増が見込める一方で、マイナス要因としては書店や映画館の休業やイベントの中止、コンテンツ製作面での遅れなどの影響がある。また、2020年7月にオープン予定であった「ところざわサクラタウン」についても、同年11月以降にオープン時期を延期している。
同社では環境の激変を好機と捉えて、DX(デジタルトランスフォーメーション)による事業構造改革をさらに加速していくと同時に、IP(知的財産)創出及びデジタル関連事業の一段の強化と不採算事業の整理などに取り組み、より強固な収益基盤を固めていく方針としている。

3. 中期経営戦略について
同社は2023年3月期までの中期経営計画において、DXの推進により同社が強みとするIP創出力とメディアミックス戦略を国内外で展開し、成長を目指す基本戦略を打ち出している。また、ESG/SDGsを意識した経営にも取り組んでいく方針で、所沢新工場の稼働による製造・物流改革で紙資源消費の抑制を図っていくほか、オンライン教育事業の強化、テレワークなどの働き方改革なども進めていく。こうした基本戦略について大筋で変更はないものの、2021年3月期業績予想の開示時点で、より具体的な内容を明示する予定となっている。

■Key Points
・2020年3月期はドワンゴの事業構造改革効果で大幅増益を達成
・DXによる事業構造改革を推進し、IPの創出及びデジタル関連事業の強化、不採算事業の見直しなどにも取り組む
・IPの「創出力×展開力×体験力」を成長エンジンとして収益拡大を目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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