レビュー

本書には、驚くべき点が2つある。
1つ目は、「目次」が存在せず、冒頭から著者の中野善壽氏が紹介されていることだ。


中野氏は、元寺田倉庫CEO。実業家としてその名を知られながら、メディアの取材をほとんど受けないため、その実像がほとんど見えてこない。本を出版しませんかというオファーはこれまで数多くあったそうだが、中野氏がまったく興味を示さず、すべて断ってきた。自分の実績をひけらかすことも、目立つことも好まないからだ。なぜ、この本については引き受けることにしたのだろうか。答えは単純。「ぜんぶ、捨てれば」という、企画書のタイトルが気に入ったからだ。さらに、「ビジネスの要諦ではなく、一人の人間としてのあり方を伝える本をつくりたい」という、担当の若手編集者によって書かれた一文を読み、即断したという。
そんな本書には、やさしくシンプルな言葉で、中野氏の信念がつづられている。周りから見れば成功した人間に見えても、中野氏は決しておごることなく、揺らぐことなく、「持たない」生き方を貫いている。「持たない」理由は明確である。自分が大切にしたいものを見失わないためだ。
それは、自由であったり、未来であったり、今という時間であったり。言われてみるとなるほどと納得できるけれど、これほど単純なことであっても、なかなか気がつけない。それが中野善壽氏の生き様から伝わってくる。
そうそう、もう1つの驚くべき点も忘れてはいけない。本書の最後に、著者印税は全て寄付されると記してあることだ。中野氏の思いに触れたあとにこの一文を見ると、深い納得感を得られるに違いない。

本書の要点

・自分の将来をつくるのは、今日の自分だ。すべては因果応報である。だから、今日の自分を妨げるものをぜんぶ捨てて、身軽に歩いていこう。
・モノを所有することは、不安を増やすことになる。モノを持たなければどこでも新しい生活を始められるし、それは人生の選択肢を広げることにもつながる。
・本当に残るのは、「形にならない思い」である。

叱ったり指摘したりするときに「思い」も一緒に伝えなければ、相手の心には残らない。その形なきものをどれだけ残せるか。それが人としての力量である。



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