レビュー

金融とテクノロジーを掛け合わせた「FinTech(フィンテック)」に興味をお持ちの方にとって、ホットワードの「人工知能」と歴史の古い「銀行経営」を組み合わせた本書のタイトルは、少々おかしなものに感じられるかもしれない。現在の日本でFinTechの名で大きく取り上げられるのは、電子による決済や送金、あるいはロボアドバイザーによる資産運用仮想通貨、はたまたソーシャルレンディングやクラウドファンディングなど、目新しいサービスや事業に関するものが多いからだ。


本書は、自らを「金融宮大工」と称し、金融機関向けに最新鋭のITサービスを提供する企業の経営者層が、共同執筆したものである。5名の執筆者はいずれも、金融・信用リスクにまつわるIT・システム事業を営んでいる。彼らは、事業性資金の貸出先に関する財務情報・属性情報・信用情報や、デフォルト(債務不履行)時のリスクといった情報を、会員金融機関に向けて提供している。
このような背景から、本書で取り上げられている「AI」は主として、金融機関から法人や個人の顧客へサービスを提供するにあたってどう活かしていくか、という方向性を主軸として語られる。
顧客に小規模事業者や個人が多い、地域の金融機関にお勤めの方や、銀行経営の将来像に興味をお持ちの方にお勧めしたい一冊だ。

本書の要点

・金融機関はもはや経済取引の中心ではない。デジタライゼーションが進む世界において覇権を握る者は、情報の製造元である「プラットフォーマー」だ。
・地域金融機関における一般個人層向けのサービスは、プラットフォーマーに浸食されることが想定される。デジタルプロセス・リエンジニアリング(DPR)を戦略実行しなければ、顧客基盤をプラットフォーマーに奪われる。
・金融商品は、今後ポイント制やキャッシュバック、商取引などとパッケージ化・一体化されたビジネスとなるだろう。



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