レビュー

地球に生命が誕生したのは、ほとんど奇跡に近い。その奇跡的な命を次の世代へと繋ぐために、私たちは死ぬのである。

命のたすきを次に委ねて「利他的に死ぬ」――これが本書に込められた著者のメッセージだ。
命は今から38億年前、たった1つの細胞から生まれた。地球上のあらゆる動植物は、すべてこの1個の細胞の子孫である。あらためてそう教えられると、その不思議さと、生命の舞台になった時空間の広大さに胸を打たれずにはいられない。生物は変化と選択を繰り返し、多様性に富んだ「生態系」を作り出してきた。
しかし、地球はこれまで5回の大量絶滅を経験してきたという。その最後のものが恐竜などの生物種の約70%が絶滅したおよそ6650万年前の白亜紀のものだ。しかし、ここで恐竜が滅んでくれた結果、私たちのような哺乳類が繁栄することができたのである。
著者が危惧するのは、6回目の大量絶滅が人間の手による生物多様性の喪失が原因で起こるかもしれないということだ。さまざまな生物が相互に依存している生態系は、多様性が失われると、ある時点で絶滅の連鎖が始まり取返しのつかないことになるという。
私たちの生命は、この誕生から絶滅に至る大きな命の流れに与している。そうした大きな視点を持てたときに、生と死の意味がクリアにみえてくるのではないだろうか。

また、社会的な生き物である人間は、生物学的な遺伝子、DNAだけでなく、文化的な遺伝子であるミームも次の世代に繋ぐことができるであろう。要約者は、そこにもう1つの希望があると感じた。

本書の要点

・死んだ生物は分解され、回り回って新しい生物の材料となる。この「ターンオーバー」を繰り返し、変化が生まれその中で特定のものが生き残るという「変化と選択」を生き物は続けてきた。
・変化による多様性を生み出すのに有効な有性生殖の仕組みを持つ生物が、進化の過程で選択されて生き残ってきた。
・有性生殖においては、子供のほうが親よりも多様性が高い。そのため、親でなく子供が生物学的に選択され、後に残る。私たち生き物が死ななければいけない大きな理由は「多様性」の維持のためである。



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