レビュー
本当は帰りたいけれど、上司や同僚が帰らないので帰りにくい。本当はやりたくないけれど、なんとなく断れない。
本書はこのように人の行動に影響を与える雰囲気を「同調圧力」と呼び、その発生のメカニズムを克明に解き明かす。著者は組織が嫌いであるがゆえに組織学者を志したという。病を撲滅するために医者になったり、犯罪を減らすために犯罪学者になったりするのと同様に、組織学を通じて、こうした同調圧力の正体を明らかにし、その対策について論じていく。
現在、日本は感染症という意味以外でも新型コロナウィルスの強い影響下にある。こうした厳しい状況が、日本の、そして日本文化のもとで動く組織の弱点を明らかにしてしまったということに、さほど異論はないだろう。これはピンチではなくチャンスなのだ。本書には、ウィズコロナの時代を生きるためにどのような組織づくりができるかという知恵が詰まっている。我々は今ようやく、長く日本を支配してきた「同調圧力」に立ち向かう武器を手にしているのかもしれない。そう思わせる一冊である。
本書の要点
・会社のようにある目的を持った「組織」が、全人格的に構成員を取り込む集団として振る舞うことで「共同体」と化してしまったとき、同調圧力が生まれる。
・同調圧力が生まれやすい条件は3つある。それは「閉鎖性」「同質性」、そして「個人の未分化」な状態である。
・条件が揃った上で「共同体主義」というべきイデオロギーが作用することで、同調圧力はさらに強固なものとなる。
・共同体主義に立ち向かうには、流動性、異端者の存在、役割分担がカギとなる。
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