レビュー

あなたは自分を見失ってはいないだろうか。こう聞かれて「はい」と答える人はまずいないだろうが、よく考えると思い当たることがあるはずだ。

「よく寝た」と思って起きたのに、スマートウォッチに「浅い眠り」と表示されたのを見て「やっぱりよく寝れなかったかも」と思ったことはないだろうか。SNSで反応が欲しくて、ちょっとだけ「話を盛って」しまったことは? 同僚が他の人の悪口を言っていて、否定できずに話を合わせたことは?
生きていて、自分を少しも「ごまかした」経験がない人はいないだろう。著者はその積み重ねによって、人は「自分を見失う」のだと述べている。現代社会は変化が激しく、人間関係を含め、さまざまな問題が複雑化している。そんな中で「自分を見失わない」ための「個人主義」を説くのが本書だ。
本書はタイトルにもあるように、14歳くらいの、思春期を迎え、人間関係が複雑化してきた世代がターゲットだ。
そのため、平易な言葉で書かれており、例も豊富でわかりやすい。しかし、もちろん大人が読んでも多くの気づきが得られる内容となっている。日々ものすごいスピードで移り変わる現代社会は、誰もが「初めて」の状況に身を置かざるを得ない。もしかしたら現代は誰もが「14歳」の悩みを抱えているのかもしれない。
本書は「自分」ときちんと向き合うためのヒントを、夏目漱石やフロム、荘子、モンテーニュなどの言葉から読み解いていく。変化の激しい毎日だからこそ、変わらぬ「自分」を持つことの大切さを考えさせられる一冊だ。

本書の要点

・物質的な欲望が充足した現代は、「感動できる体験」が商品となる。「かけがえのない」はずの人の感情は、ネットで拡散され交換可能な商品となる。
・人間は体全体の感覚を使って思考するものだが、脳だけを重要視する傾向が強まっている。自分の感覚が信じられず、人は脳を模したAIに支配されていく。
・SNSは、プライバシーを必要以上に露出させ、感情を揺さぶるメディアである。「自己発信」はいつの間にか「自己欺瞞」に変わる。


・社会が変わっても、人の心は大きく変わらない。複雑化した現代社会を乗り越えるヒントは、歴史の中にある。



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