レビュー

製鉄、ハーバー・ボッシュ法、蒸気機関、電気、原子力、そしてインターネット。ある技術の登場は、時に人間社会のありようをがらりと変えてしまう。

それは新たな職を生み出し、そして時に既存の職業を消し去り、文明はそのたびに大胆な衣替えをした。そして今まさに、私たちはそうした技術を目の当たりにしている。それこそが生成AIである。
人のように会話をこなし、人が何時間もかけて作り出すような画像を瞬時に出力する。今なおその技術は進歩し続け、私たちの社会に与えるインパクトは計り知れないものとなっている。だからこそ、今なにが起こっているのか、これからどういう未来が待ち受けているのかを知る必要がある。
社会のうねりに翻弄されていては、時代に取り残されてしまうだろう。
しかし生成AIは専門性の強い分野だ。追いつこうにも最先端の論文をいきなり理解することは困難である。本書の強みは、第一線でAIを研究している著者が、複雑かつ予測困難なAIという技術を、平易な言葉で分かりやすく解説しているところにある。
本書では、今までの技術革新や歴史を踏まえた上で、AIが私たちの社会にどのような影響を与えるかを予測している。AIが与える影響が未知数であり、恐怖を覚えることも自然な反応かもしれない。
しかし本書でも指摘されているように、社会への実装を止めることは現実的ではない。ぜひ本書を手に取り、AIに対する正しい知識を身に付け、時代の流れに加わってみてほしい。

本書の要点

・生成AIとはディープラーニングという技術を使って、新たに文章や画像、音声などをつくる人工知能技術の一種である。
・生成AIの影響を最も受けやすいのはホワイトカラーの職種だ。逆に肉体労働の仕事はAIが代替しにくい。仕事がAIに奪われるかどうかは、AIが「労働補完型」の技術か「労働置換型」の技術かを考える必要がある。


・AIの無断学習については是非が問われている。しかし学習自体を規制すると、情報科学技術の発展そのものを阻害してしまう。



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