レビュー

あなたは「机」という言葉を聞いて、どんなものを思い浮かべるだろう。脚があって、天板があって、だいたいこれくらいの大きさで……と、頭の中に何らかの「机」がイメージされるはずだ。

しかし、世界には無数の「机」と呼ばれるものが存在する。脚が長いもの、短いもの、3本のもの、4本のもの、天板が四角いもの、丸いもの、楕円のもの……。そのすべてを見たことがある人などいないにもかかわらず、私たちは「机」という言葉によって、ある物体のイメージを共有することができる。なぜ私が「机」と言ったとき、あなたは「机」を理解できるのか? この問題を説明するのが、ヴィトゲンシュタインの「言語ゲーム」である。
本書はこうした、一度考え始めると抜け出せなくなってしまいそうな哲学的な問題を、平易な言葉で説明してくれる。はじめは何がなんだかわからなかった論理でも、読み進めるうちにすっと理解できてしまうのが不思議だ。
本書の魅力は、そのわかりやすさだけではない。ヴィトゲンシュタインという人が、どのような人生を送り、何に苦悩し、なぜこのような思想にいたったのかまでを、時代背景や関連する学問とともに紐解いている。
インターネットで検索すれば大概の情報は手に入ってしまう現代だからこそ、「調べてもわからないこと」に思いを巡らせてみるのも大切な時間だ。日々を忙しく過ごすビジネスパーソンにも刺激的な読書となるだろう。

本書の要点

・前期のヴィトゲンシュタインは、「言語と世界(出来事)とは一対一に対応する」という写像理論によって言葉が意味を持つことを説明する。一方、後期のヴィトゲンシュタインは、言語と世界(出来事)が対応している根拠を「言語ゲーム」で説明した。


・「言語ゲーム」は、「規則に従った人々のふるまい」である。「机」という言葉を知らない人でも、いくつかの机を見れば「机」がどのようなものか理解する。同じように、人は世界に存在する無数のルールを、人々のふるまいを見ているうちに理解する。世界は「言語ゲーム」でできている。



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