レビュー

身近な飲み物であるコーヒー。仕事の合間のリフレッシュや、カフェで飲む一杯を楽しみにしている人も少なくないだろう。


しかし、そのコーヒーが「持続不可能」だとしたら、どうだろうか。今のように気軽に飲めなくなったり、味が著しく落ちたりしたら……。
実際、気候変動などの影響により「2050年までにコーヒーの生産地が移動したり、縮小したりする」と予測されている。栽培環境の変化や生産農家の貧困といった複数の問題が絡み、「美味しいコーヒー」は危機に瀕している。
本書は、「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標すべてを、コーヒーという一つの飲み物・農作物を通して読み解いていくという、野心作だ。
コーヒーとは、非常に矛盾に満ちた存在でもある。生産国の多くは赤道付近の開発途上国である一方、消費の大半は欧米や日本などでなされる。生産者と消費者が交わることはなく、互いの事情を知らない。私たちが至福の一杯を楽しんでいる裏で、生産者は貧困や環境破壊や不平等など、様々な問題にあえいでいる。
コーヒー、経済、開発援助の3人の専門家が手掛けた本書は、コーヒー生産国の実情に加え、SDGsそのものについても丁寧に解説されている。SDGsとは地球全体の目標であると同時に、私たち一人ひとりの目標でもある。「一杯のコーヒー」というレンズから世界を覗き、SDGsを身近に感じていただきたい。
きっと、今の自分にできることが見えてくるはずだ。

本書の要点

・コーヒーを持続可能なものにするには、遠く離れたコーヒー生産地で起こっていることを正しく知り、自分たちの選択や行動に活かすことが必要だ。
・コーヒー生産者が1杯のコーヒーから得られる利益は「たった1%」である。この割合は、高品質の豆であるほど高くなる。生産者の貧困を解消するには、消費者は安さよりも味や品質に敏感になり、そのような商品やそれを提供してくれる店を選択すべきだ。
・気候変動の影響で、2050年までにコーヒー生産地域の移動や縮小が予測されている。



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