レビュー

「ファイナンスの勉強に必要以上の時間とお金をかける必要はない」。これは、MBA留学をしてまでファイナンスを学んだ著者が、本書の冒頭で繰り返し伝えるメッセージだ。


社会人の学び直し(リカレント教育)やリスキリングへの注目が集まるなか、とりわけ経営企画や経理財務、新規事業に携わる方にとって、ファイナンスは1つの候補科目だろう。また、今後のキャリアを広げるためにMBA取得を視野に入れている方もいるかもしれない。とはいえ、多くのビジネスパーソンにとってファイナンスは「道具」の1つである。企業が行う財務的な意思決定の方法について、なるべく短期間で、実務に必要な点を身につけ、現場で使いこなすことが目標となる。難しい最先端のファイナンス理論は、専門家と研究者に任せればいい。そう思うと少し気が楽になるのではないだろうか。
著者は日産自動車の財務部でファイナンスの実務経験を積んできた人物である。本書は、2005年の出版以来、「わかりやすいファイナンスの書」として読み継がれてきたロングセラーの改訂版である。必要最低限の数式とともにファイナンスの理論が解説され、実践に使えるEXCELの関数も紹介されている。
「投資や資金調達の判断指標を学びたい」「プロジェクトの評価などにファイナンスを活かしたい」。そんなニーズをもつ方にぜひおすすめしたい実践書だ。

本書の要点

・企業が行う財務的な意思決定の方法を学ぶ学問がファイナンスである。

投資・調達・株主還元の意思決定の先にあるのは、企業価値の最大化だ。
・企業は正味現在価値(NPV)を投資判断に用い、株主や債権者は企業価値評価にフリーキャッシュフロー(FCF)を用いる。
・最適資本構成は、デットの節税効果と財務破綻コストのトレードオフで決まる。
・経営の自由度の価値は、ディシジョン・ツリー法やリアル・オプション法で評価する。その本質的価値は、経営者がオプションを行使する決断ができることにある。



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