レビュー

2021年、フェイスブックが社名を「メタ」に変更したことは、記憶に新しい。VRヘッドセットの最先端であるOculus社を買収、長期的な視点に立った巨額投資で知られている。

言わずもがな、社名の「メタ」は「メタバース」から取られたものだ。GAFA(GAFAM)の一角であり、SNS業界におけるパイオニアとして名を馳せたフェイスブックが社運を賭けて注力するメタバースとは、一体何なのか? この質問にはっきりと答えられる人は、決して多くはないだろう。
 本書は実際にVRプラットフォームベンチャーを立ち上げた創業者が語る、メタバースについての教科書的な入門書だ。メタバースという概念がいつ、どこから出発し、どのような紆余曲折を経て、そしてこれからどこへ向かうのかが、実際にその業界の先端でビジネスを営む当事者の目線から、そしてメタバースの世界に魅せられたひとりのギークの目線から、存分に語られている。
 テクノロジーは、世界を変えてしまうこともあれば、期待されたほどでないこともある。メタバースという言葉は、バズワードとしてひとり歩きしてしまっている感もある。しかし本書を通じてメタバースという概念の歴史と現在を知ると、それが一過性のブームではなく、長い時間をかけて着実に進歩してきた、未来の方向性のひとつなのだということがよくわかる。
 著者はメタバースを「人類の描いた夢の生活スタイル」と定義している。だとすれば、それがビジネスとして実を結ぶかは、単にタイミングの問題にすぎない。人類が夢を目指して進歩する以上、メタバースはいつか必ず実現するだろう。そう感じさせる一冊だ。

本書の要点

・メタバースとは、デジタルで構成された空間で生活する社会のことである。


・ビジネスとしてメタバースが注目されているのは、まさにそこが生活空間であることによる。常に人が集まり話題を呼んでいる場所では広告が有効なだけでなく、多様なクリエイターが集い、新たなサービスさえ生まれてくる。
・メタバースは物理的な制約から解き放たれているからこそ、さまざまな可能性を持っている。



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