レビュー

脳の地図を思い浮かべてほしい。ここはものを見るため、あそこは記憶をするため。

領域ごとに役割があり、きれいに区分けされている。そんな脳へのイメージは、この本で大いに書き換えられてしまう。
昼夜を問わず、脳では領土争いが繰り広げられている。互いにぶつかり合いながら、適切な相手とつながりあい、近くに住んだと思えば、ときに復讐することもある。何兆もの「生きもの」が集まった、生きた生命体、それが脳なのだ。
せわしなく過ごす日中ではなく、夜になって寝首をかこうとしている輩もいるかもしれない。「視覚をつかさどる領域が他の感覚に乗っ取られるのを防ぐために夢がある」という著者の仮説は、とても刺激的だ。「要するに夢というのは、神経の可塑性と地球の自転とのあいだに誕生した奇妙な私生児ではないだろうか」という表現はなんとも詩的だ。
著者は神経科学者であると同時に、脳と機械をつなぐブレイン・マシン・インターフェースを開発する、ネオセンソリー社のCEOでもある。同社の製品であるネオセンソリー・ベストは、たとえば「音を触覚に変換」する。生まれつき音の聞こえない人が、皮膚で「聞く」方法をマスターしていく。そんな信じられない瞬間をいくつも目にしてきた著者ほど、脳の可能性を確信している人間はいないかもしれない。

まだ未知なことも多い、だからこそ深くて素敵な脳の世界へようこそ。この本を読めばあなたも、自分がもつ素晴らしい「能力」に魅了されるはずだ。

本書の要点

・脳は自らの配線を変え、果てしない変化と適応を続ける「ライブワイヤード」なシステムだ。感覚器官の活動バランスが崩れると脳領域は短時間で乗っ取られる。
・汎用の計算装置である脳は、ある感覚で別の感覚を代行できる。感覚代行の先には、感覚強化、感覚追加の世界が広がっている。
・脳は義腕のような新しい体でも、巧みに操る方法を学習できる。
・自分にとって何が大事かにもとづいて、脳の領土の地図は描かれる。



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