レビュー

アップルのiPhoneはそれまでの携帯電話を駆逐した。ネットフリックスの動画配信サービスがDVDレンタル会社を苦境に立たせ、アマゾンのインターネット書店が実書店に壊滅的な打撃を与える――。

新興企業によるイノベーションが、絶好調だった企業を窮地に陥れる例を、私たちはいくつも知っている。ここで疑問が沸く。成功している組織は、優れたリソースを持っているにもかかわらず、なぜイノベーションを起こせないのか。どうすれば組織は持続的に成長できるのか。
これらの疑問に答えを示すのが本書だ。イノベーション研究の最前線を行く二人の研究者が執筆した本書は、2019年に日本でもベストセラーになった『両利きの経営』の増補改訂版である。世界各地の事例がさらに充実しただけでなく、実践的な考察が2章も追加された。初版の読者も新たな発見を楽しめるだろう。
日本企業の経営課題に造詣の深い入山章栄氏と冨山和彦氏による解説も刷新された。日本特有の問題に引きつけて「両利きの経営」を論じる両氏のW解説は、本書への格好のイントロダクションとなっている。
「両利きの経営」は、日本でよく知られる「イノベーションのジレンマ」理論を発展させた、世界のイノベーション研究における最重要理論だ。世界の不確実性が強まる今、「両利きの経営」の重要性はますます高まっている。
未来を切り拓くための視点を授けてくれる本書は、リーダー層はもちろん、すべてのビジネスパーソンが読むべき一冊といえる。

本書の要点

・組織が成長し続けるためには、既存事業の改善を極める「深化」と、新規事業に挑戦する「探索」を、同時に推し進める「両利きの経営」が必要だ。
・「探索」を成功させるには、アイディアの種を見つけるアイディエーション、芽を育てるインキュベーション、事業を大きくするスケーリングの3つの段階すべてが重要だ。
・「両利きの経営」を成功させるうえでリーダーに必要なのは、戦略的意図を持つこと、積極的に探索を支援すること、適切な組織構造を設計すること、共通のアイデンティティを醸成することである。



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