レビュー

あなたは倉本長治氏をご存じだろうか。倉本氏は、1899年に生まれ、月刊誌「商業界」主幹を務めた人物だ。

「店は客のためにある」という主張のもと、全国各地に赴き、商人の心得を精力的に発信し続けた。その功績から「日本商業の父」とも呼ばれている。
倉本氏を信奉する経営者は多く、ファーストリテイリングの柳井正氏もその1人だ。柳井氏は倉本氏の「店は客のためにあり 店員とともに栄える」という言葉に感銘を受け、執務室の壁に掲げているという。同氏は本書の解説で、これまで倉本氏の言葉に何度も励まされてきたと語っている。
本書は、「商業界」で編集長を務める笹井清範氏が著者となり、倉本氏の考えのエッセンスを紹介してくれる一冊だ。
商売の本質とは何か、「本当の商人」になるにはどのような心構えが必要なのか、どのような態度で人材育成に取り組むべきか――。その教えには、商売の目的は目先の利益ではなく、商売に関わるすべての人々の暮らしを守り、社会と文化の発展に役立つことであるというメッセージが詰まっている。当たり前のようにも聞こえるが、これを蔑ろにしている経営者は多いのではないだろうか。
本書のメインターゲットは経営者だ。だが今や、幹部社員はもちろん、一般社員にも経営者マインドが求められる時代である。そんな時代にあって、すべてのビジネスパーソンが読むべき、心に沁みる一冊だ。

本書の要点

・商売の目的とは「人の幸せ」を育むことである。その目的を達成すれば、利益は自然とついてくる。
・店員は店主の分身だ。良い店主がいなければ良い店員は育たない。
・買物は商人に対する信頼と期待の表明だ。消費者には、買物を通じて、お客様はもちろん、従業員、取引先、地域社会の利益を守り、未来を見据えて行動できる「良い商人」を選ぶ権利がある。

長い人生をかけて、「良い商人」への道のりを歩みはじめよう。



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