レビュー

「ユニコーン企業」という言葉がある。これは一般に「企業価値評価額10億ドル以上で、設立10年以内の未上場ベンチャー企業」を指す。

そのような価値を持つに至る企業は極めて少なく、その希少さから幻獣ユニコーンにたとえられる。起業家にとってこうした会社を作ることは夢のひとつであると言ってよいだろう。
本書の著者であるユリ・レヴィーンは、そのキャリアにおいてユニコーン企業を2つも創出している連続起業家である。ドライバー向けナビゲーションアプリ「ウェイズ」はGoogleに11億5000ドルで、公共交通機関のナビゲーションアプリ「ムービット」はインテルに10億ドルで売却されている。
なぜユニコーン企業を2つも創り出すことができたのか。ユリ・レヴィーンはこう語る。それは、問題に恋をすることだ――。
本書はさまざまな困難を乗り越える一途さを「恋」に、ユーザーにとっての初めてのプロダクト体験を「ファーストキス」に、イグジットを「子どもが生まれること」にたとえる。ひとつひとつの比喩によって表される具体的なアドバイスの内実も重要であるが、そのストーリーテリングの巧みさこそが、ユニコーン企業を創出するに必要な条件のひとつであるのだろうと感じさせる。
我々は誰もがユニコーンを求めている。しかしその幻獣が実在すると投資家やチームメンバーに信じさせることができるのは、ストーリーの力なのだ。

本書の要点

・スタートアップを立ち上げるときは、問題に恋をすべきだ。

決して解決策に恋をしてはならない。解くべき問題こそが重要で、解決策は後から来るものだからだ。
・恋をするべき問題は、解決すべき価値のある問題でなければならない。たくさんのデートを重ねて運命の1人を決めるように、取り組むべき問題を吟味しなくてはならない。
・ユーザーにとって、プロダクトとの出会いは初めてのキスである。二度とやり直すことはできず、忘れられることもない。ユーザーの体験は慎重に作り込む必要がある。
・イグジットは子どもに似ている。子どもが大人になるように、買収された会社はもはや自分の手を離れる。そのことを受け入れる心の準備が必要だ。



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