レビュー

この世界に、政治と関わりのない人はいない。現代日本であれば参政権について憲法に書かれているし、実際に投票に行くというかたちで主権を行使している。

一方で、政治が果たしてどのような理念に基づき何をしているのか、あるいは政治にまつわるさまざまな制度がなぜそうなっているのか、すぐに説明できる人はほとんどいないのではないだろうか。
自然科学が長い歴史の中で進歩してきたように、人類はよりよい政治を求めてさまざまな探求と実験を繰り返してきた。ところが、本当はそう簡単ではないのだが、自然科学が自然の振る舞いを一種の「正解」とすることができるようには、政治は「正解」を決められない。
そこで重要な役割を果たしてきたのが、思想と哲学だ。哲学というと、何か現実には役立たない抽象的な思索に重きを置くイメージがあるかもしれない。しかし、どのような政治が「正解」であり目指すべきものなのか、そこに社会情勢を鑑みた理論的な枠組みを与えてきたのは、いつも哲学だった。今生きる世界に現れているさまざまな政治も、やはり過去の哲学から生まれてきたのである。
本書は英米の大学生が学ぶ政治哲学史を通じて、政治と哲学が人類の歴史においてどのように絡み合ってきたのかを教えてくれる。そしてそれは、政治を通じて自らの生活を改善しようとする我々市民にこそ、必要な文脈なのだ。

本書の要点

・アリストテレスは、あらゆる意思決定に市民が直接参加する政治を理想とした。
・トマス・アクィナスは、自然を神が創った書物であると捉えることで、信仰を深めることと科学の発展の矛盾を解決しようとした。
・ホッブズは「リヴァイアサン」という概念を生み出し、生存へと向かう共通認識のために政府が存在していると考えた。


・アーレントは古代ギリシャの政治をある種の理想と捉え、政治に参加することこそがもっとも人間的な営みであるとした。



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