レビュー
「新サービスは当社のお客さまにきっと気に入っていただけるはずだ」「この広告はターゲットに刺さらないのでは?」……組織では日々、このような議論が交わされている。では「当社のお客さま」や「ターゲット」とは、具体的に誰のことだろう? この問いにドキッとしたら、ぜひ本書を手に取ってみてほしい。
著者の西口一希氏は、P&G、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースなどのマーケティングや経営に携わったのちに独立し、累計380社を超える企業の支援を行ってきた。『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』や『実践 顧客起点マーケティング』など、西口氏の著書を愛読しているマーケターも多いだろう。
そんな西口氏は本書で、多くの企業において「『お客様第一』『顧客視点』などと言いながら、最も重要な顧客が見えなくなっている」と指摘している。そしてその上で、インタビューを通して実在する1人の顧客(=N1)を徹底的に理解し、その顧客が価値を見出す便益と独自性を把握して商品開発や訴求に生かすアイデアを得る「N1分析」の重要性や実践方法を詳しく指南する。
「たった1人にフォーカスしていては、多くの人に愛されるプロダクトはつくれない」と、このアプローチに抵抗を抱く人もいるかもしれない。だがそんな人も、本書を通読すれば、きっとN1分析を実践したくなるはずだ。
本書の要点
・「N1分析」は、実在する顧客1人ひとりを「N1インタビュー」によって深掘りし、顧客ニーズを洞察して、プロダクトや広告に生かす帰納的なアプローチである。
・大ヒットした「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」の広告や「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」の商品開発の裏側には、N1分析があった。
・真っ先に「N1インタビュー」の対象にすべきは、単価や頻度を上げて継続購入してくれている「積極ロイヤル顧客」だ。商品・サービスとの出会いから現在までを深掘りし、顧客にとっての便益と独自性を探ろう。
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