レビュー

「古典」といえば、学校の授業。学生時代は、結局何が面白いのかわからないまま終わってしまった——。

そんな人におすすめしたいのが、本書『実はおもしろい古典のはなし』だ。
本書は、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で話題の書評家の三宅香帆氏と、『ニセコ化するニッポン』など、都市やチェーンストア論で注目を集める谷頭和希氏が2人で行っていた中高生向け古典教養バラエティー番組「放課後の古典ラジオ」を書籍化したものだ。生粋の「古典オタク」である三宅氏と高校で古文を教えていた経験のある谷頭氏の「おしゃべり」には、古典文学の知識がふんだんに散りばめられているのに、堅苦しさはまったく感じられない。2人のやりとりがとにかく楽しそうで、自分も古典を愛するものの語らいに参加している気分で、どんどん読み進められてしまう。
とりあげられるのは、『万葉集』『古今和歌集』『源氏物語』『枕草子』『方丈記』など、誰でも聞いたことがあり、教科書で見たことがある作品ばかりだ。「古典」という現代とは切り離されたこれらの作品を、2人はグッと現代の視点に引き寄せ、私たちにも共感しやすいかたちで見せてくれる。古典入門書でありながら、すでに古典に親しんでいる人にも、新鮮な発見があることだろう。古典の楽しみ方はこんなにも自由でいい。そんな古典を楽しむ姿勢そのものを教えてくれる本書を読み終わったら、自分なりの古典の楽しみ方を見つけてみたいという気持ちになれるはずだ。

本書の要点

・恋愛物語がたくさん詰まったアンソロジーとしての性格を持ち、物語の合間に和歌で自分の心情を綴る形式をとった『伊勢物語』には、現代の少女漫画の原型が詰まっている。
・『枕草子』は、清少納言がお仕えする定子の素晴らしさと、自分たちの絆を描いた、「推し」語り作品として読むことができる。
・和歌=SNSと捉えてみると、もっと軽いノリで和歌を楽しむことができるようになる。



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