レビュー
「哲学」といえば、古代ギリシャ発祥の西洋の思想である。現代の最先端の哲学者である著者も、「新実在論」と「新実存主義」というオリジナルな思想を提唱しつつ、その発想は西洋の哲学の伝統に根づいている。
グローバル化が進む時代に生まれ育った著者は、西洋と東洋の存在論の統合を目指す。本書でも仏教、ヒンドゥー教、老子、孔子、西田幾多郎などについて掘り下げて論じられており、東洋思想への造詣も深い。新実在論と新実存主義は、西洋の近代的な人間の自己のあり方を批判的に再構成するものであり、西洋に対するオルタナティブである。
私たちの日常的な感覚では、世界や時間が、認識される対象として客観的に存在しているように思われている。しかし、著者はそうではない可能性をひらき、その点が特に東洋思想と共鳴する。ふだん何気なく生きている世界も、これは本当にあるものなのか。時間とはいったい何なのか。そうした問題について、西洋哲学と東洋思想という多角的な観点から、本書を通して、深く考えることで、様々な気づきを得られることだろう。
本書の要点
・現代における危機は、単に複数の危機がある「複合危機」というよりも、一つの危機が別の危機に組み込まれて相関関係にある「入れ子構造の危機」であり、物事の関係のあり方を重視する東洋思想が存在感を増している。
・「縁」によって物事をとらえ、世界を幻とする仏教の存在論は、新実存主義と新実在論に共通するところがある。
・客体と主体の相関関係として捉えられた西田幾多郎の「純粋経験」は、それを知るすべがないという点で問題はあるが、新実在論と同様に入れ子構造を見いだせる点で優れている。
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