レビュー

「原材料費の高騰により、定価改定せざるを得ませんこと、なにとぞご理解いただけますと幸いです」
昨今は、そのような掲示を見飽きるほど目にする。ひたすら家計が圧迫されているように感じても、消費者はただ甘受するしかない。

なぜそのようなことが起きるのか。その経済学的なメカニズムを知っておくことはとても大切だ。
その基礎となる大学の講義内容について、10時間分という大変な駆け足で手際よく解説してくれるのが、本書である。ミクロ経済学の基本から、マクロ経済学の応用的なテーマまで、たくさんの図解とともにしっかりと学ぶことができる。
経済学が必要なのは、もちろん家計ばかりではない。ビジネスの現場では、経済学的思考がますます求められている。この思考方法について著者は、「何ごとも相対的な関係性によって決まる」考え方だと述べる。たとえばモノの値段は需要と供給の相対的な関係によって決まる。この思考法が身につけば、世の中の動きをきちんと理解できるようになるという。
「経済学は私たちを『幸せ』にするための学問」である。お金だけではなく、どのような社会システムであればより豊かな社会に近づけるのかを探究するのもまた、経済学なのだ。
上がりゆく物価にため息をつくだけでなく、幸せに一歩近づくためにも、いまこそ、経済学への扉を叩いてみよう。

本書の要点

・経済学は「制約付きの最大化問題を用いて分析する学問」である。
・ミクロ経済学は「市場全体の需要と供給の分析を積み上げて経済を説明」する。マクロ経済学は、「物価、インフレーションや失業、国民総生産の決定、経済成長など国民経済全体の経済の動き」に着目する。ミクロとマクロは互いに補い合う存在だ。
・ミクロ経済学において、家計はさまざまな財やサービスを消費し、「経済的な満足度を高める消費活動」を行なう。企業は、「労働者を雇用して機械などの資本設備を用い生産活動を行う経済主体」であり、長期的な利潤の追求を最大の目的とする。



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