ワールドカップイヤーに入り、ブラジル代表の本大会招集メンバー候補とみなされる選手たちの、各クラブでの好不調などがブラジルでも盛んに報道されている。
そのうちの1人が、24歳のFWリシャーリソン(エバートン)。
2015年のアメリカ・ミネイロに始まり、フルミネンセ、ワトフォード、エバートンと順調に歩んできた彼のプロ人生が、来季ステップアップする可能性も報道されている。
マンチェスター・ユナイテッド、トッテナム、ニューカッスルが獲得を打診をしているという話に加え、今月に入って「レアル・マドリーのカルロ・アンチェロッティ監督がクラブにリシャーリソン獲得を求めている」というニュースもあった。エバートンとの契約は2024年まで続くものの、今後の行方が注目されている。
そんな好調リシャーリソンだが、3月下旬の南米予選では、ブラジル報道陣に「ほんの少しだけ、尊重してくれてもいいのではないかと思う」と心情を吐露する場面があった。
活躍後に訪れた苦しい日々
リシャーリソンは2018年9月の親善試合でフル代表に初招集され、2試合目の初スタメンの時に初ゴールを決めた。それ以降、代表の常連としてFW陣の一角を担っている。
昨年もコパ・アメリカ準優勝に貢献し、その直後に東京五輪代表に合流。5ゴールで得点王を獲得し、ブラジル金メダルの原動力の1人となった。
続く9月の南米予選では、継続した2大会出場、しかも1つはクラブが選手を提供する義務のない五輪のために彼を代表チームに送り出したことで、FIFAのルールとして招集が見送られた。
その後だ。リシャーリソンにとって、苦しい日々が始まった。膝やふくらはぎのケガによりクラブでも試合を離れた時期があった上に、ブラジル代表からは10月、11月、そして今年1月の南米予選招集メンバーから外れてしまった。
その間、彼がクラブでのプレーに戻っている時期でも、チッチはブラジル代表フィジカルコーチとともに、万全の状態になるのを待つと説明していた。
「万全の状態になるのを待つ」の言葉通り、チッチ(右)は3月の南米予選でリシャーリソンを招集した
3月に代表復帰した際、自分が代表にいなかった間、どんなふうにテレビ観戦していたかを聞くと、彼は笑顔で答えた。
「僕はピッチの中にいる時でさえ、ブラジル代表のサポーターなんだ。テレビで観るとなれば、ユニフォームを着込んで、まるでスタジアムにいるかのように応援していた。ブラジル代表とはそういうもの。
しかし、日頃から「ブラジル代表は僕のすべて」と言い続けていた通り、それは非常に辛いことだったとも語った。
「すごく悲しかった。深刻なケガで外れていたんだから。(ブラジルで)多くのリポーターやコメンテーターたちが、僕はもうW杯からも外れたと言っているのも見ていた。僕は冷静だったよ。
「僕のすべて」と語るブラジル代表でのリシャーリソンは常に充実の表情を見せる
「人生をかけてプレーする」
ブラジルメディアの中でそういう厳しい見方があった理由には、彼がいなかった間、ハフィーニャ(リーズ)やアントニー(アヤックス)がフル代表デビューを果たして結果を出し、ビニシウス・ジュニオール(Rマドリー)が成長を遂げていたのもある。
ネイマールは別格としても、ガブリエウ・ジェズスやフィルミーノといった中堅やベテラン、ロドリゴ(Rマドリー)のような若手も含め、ブラジル代表FWはW杯招集枠の激戦区となっているのだ。
つい最近まで期待の若手の筆頭だったリシャーリソンも、競争相手が増えたことを認めている。
「新しく入った選手たちが成長しているのを見ている。試合で良いプレーをしていて、本当に賞賛に値する。毎日のように若くて有望な選手が出てきていると言ってもおかしくないんだ。競争はすごく厳しくなっている。でも、僕もみんなと仲良しだからとかそんな理由ではなく、エバートンでのプレーがあってこそ招集されているんだ。ベストを尽くしてゴールやアシスト、すべてのプレーをしていくつもりだ。
有言実行のように、復帰したばかりの3月の南米予選では、途中出場のチリ戦で1ゴール、スタメンとなったボリビア戦で2ゴールを決めた。この後もクラブで、そして代表の親善試合で、W杯への切符を賭けた戦いが続く。
ボリビア戦では2ゴールを記録。夢のW杯出場に向け、FWポジション争いは続いていく
Photos: Lucas Figueiredo/CBF