昭和のスター笠置シズ子の半生を描いたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」は、世帯視聴率こそ15%台とパッとしなかったが、主演の趣里の明るい歌と踊りでNHKもびっくりの盛り上がりとなった。続く「虎に翼」は、日本で女性初の弁護士や裁判所長になった三淵嘉子がモデル。

主人公・猪爪寅子を演じる伊藤沙莉の演技力は折り紙付きで、「ひよっこ」の米屋の娘役以来の朝ドラ出演となる。


 “虎に翼”は中国歴史書のことわざで、強いものがいよいよ勢いづく意味という。


 寅子(愛称トラコ)は法律という翼を得て、男性支配の固陋な法曹界に敢然と立ち向かい、女性たちの新たな道を切り開いていく。奮闘するヒロインは朝ドラの定番テーマだが、「らんまん」「ブギウギ」と続いた好調を引き継げるか。


 ヒットする朝ドラには、いくつかの共通点がある。よくいわれるのが、タイトルに「ん」があると人気になるというもの。

「おしん」や「おはなはん」の大ヒットから生まれた伝説で、なるほど「あまちゃん」「らんまん」もそうだ。でも、好評だった「エール」や「あさが来た」、いや「ブギウギ」も「ん」はない。逆に、「ちむどんどん」は「ん」が2つもついて大コケした。「虎に翼」に「ん」はないが、「ん」のジンクスは当てにならない。


「時代をまたぐストーリー」というのもヒット作に共通している。「ブギウギ」は大正と昭和、「エール」は明治から東京オリンピック、「カムカムエヴリバディ」は大正から令和、「らんまん」はなんと江戸時代に始まって昭和の戦後までのお話だった。

時代の変転とともに主人公の人生は波瀾万丈、テレビの前で応援したくなるのだ。


「虎に翼」は昭和の初期から昭和50年代まで、日中・太平洋戦争を挟んだ時代またぎとなる。


 ちなみに、「ウェルかめ」「つばさ」など平成が舞台の“現代もの”は、「あまちゃん」を除くと低調である。


■“ロス現象”が人気を押し上げ


「3つ目の共通点は、主人公の身近な人の死です。『ブギウギ』は水川あさみの母親、黒崎煌代の弟、水上恒司の内縁の夫、『らんまん』は広末涼子の母親と松坂慶子の祖母が亡くなり、『なつぞら』では吉沢亮の農村画家、『あさが来た』はディーン・フジオカの五代友厚らです。そのたびに“ロス現象”が起きて、それがまた人気を押し上げます。

『虎に翼』のモデル三淵嘉子も夫は戦病死、弟は戦死します。ドラマではイケメンの仲野太賀と三山凌輝が演じているので、ロス現象が起きそうです」(テレビ情報誌編集デスク)


 最近は朝から暗い気分になりたくないということなのか、とにかく明るいドラマでないとウケない。「おしん」のような「極貧少女物語」はもうカンベンということで、「らんまん」は浜辺美波がさわやかだったし、「ブギウギ」はステージ場面が賑やかだった。「虎に翼」は猪爪寅子が舌鋒鋭く訴訟の相手方をコテンパンにし、事件や裁判を見事に解決していく爽快感あふれるドラマというから期待できそう。伊藤沙莉はコミカルな芝居もうまい。どうやら、「虎の翼」はヒット朝ドラの条件がそろっているようで、楽しみだ。


(海原かみな/コラムニスト)