女優の寺島しのぶさん(51)が6月15日から新宿・花園神社境内特設テントで上演される劇団新宿梁山泊公演「おちょこの傘もつメリー・ポピンズ」(作=唐十郎、演出=金守珍)に出演することが明らかになった。
これは劇団状況劇場が1976年に初演した作品で、今回、寺島さんのほかに豊川悦司、中村勘九郎、風間杜夫、六平直政ら錚々たる俳優陣が顔をそろえた。
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──今回、テント芝居に出ることになったきっかけは?
「2010年にシアターコクーンで上演された『血は立ったまま眠っている』(作=寺山修司、演出=蜷川幸雄)で共演者として新宿梁山泊主宰の金守珍さんや六平直政さんと出会い、その縁で翌年、金さんの奥さまの水嶋カンナさんが主宰するProject Nyxの『伯爵令嬢小鷹狩掬子の七つの大罪』という、寺山修司作の舞台に出させていただいたんです。
下北沢のザ・スズナリという小劇場ですが、役者にとって下北沢は演劇の聖地。私もスズナリは憧れの劇場でしたからうれしかったです。楽屋が小さい、ダニが出る、暑い・臭いという難点をすべて超越した達成感がありましたね(笑)。ただ、新宿梁山泊のテント芝居は何度も見ていましたが、まさか自分が出るなんて考えもしませんでした」
新宿梁山泊の「下谷万年町物語」に感動し…
──それが実現したのは?
「2022年に、瀬戸内寂聴と井上光晴をモデルにした『あちらにいる鬼』という映画を撮影しているとき、共演していた豊川さんが珍しく、『今、花園神社でやってる新宿梁山泊のテント芝居に六平(直政)さんが出ているから見に行こうよ』と誘って下さったのでご一緒したんです。
豊川さんとは共演も多く、いろいろやり尽くした感じがあって、今度は演劇でご一緒したら面白いんじゃないかと思って。そして、何日か前に中村勘九郎さんもテントを見にいらしたと聞いて、これはもう何かのおぼしめしかなと思いまして、それからテント芝居プロジェクトがスタートです」
──プロジェクトというのは?
「毎月1回、みんなで集まって作戦会議という名の飲み会です。豊川さん、勘九郎さん、六平さん、金さん。まず何をやろうかということで『蛇姫様』の案も出ましたが、豊川さんが『蛇姫様より“おちょこ”のほうがいい』と言うので演目は決定です。
それに、伝え聞いた話では、新宿梁山泊が1996年に上演したテント芝居『四谷怪談~十六夜の月』を見た18代目勘三郎さん(当時・5代目勘九郎)と8代目・中村芝翫さん(当時・3代目橋之助)が打ち上げの席で舞台の水槽に裸足になって入り、『これが歌舞伎の原点だよ。こういうのに出たいな』と大はしゃぎされたそうです。勘九郎さんがお父さまの夢を実現するなんてしびれるじゃないですか。それぞれのモチベーションを高めていき、絶対実現させようと、六平さんが毎回スケジュール調整してくださり、この顔ぶれが揃うなら俺も! ということで、風間さんも参入。
後は少しずつ少しずつ進んでいきました。
セリフを覚えるのは家族が寝静まった後
──今回の見どころは?
「全部です。金さんとは『小鷹狩掬子』で絶妙な音楽の使い方やシャープで猥雑でスペクタクルな演出を経験しているし、唐さんや蜷川さんから絶大な信頼を寄せられる演出家です。何よりも役者を舞台上で気持ちよく演技させてくれるから大好きです。唐作品は『秘密の花園』(2018年)に出たことがあるだけなので、金さんや共演者の皆さんとどっぷり唐さんの世界にはまっていきたいと思います。
今回の物語は1972年に起きた大物歌手のスキャンダル事件をモチーフにしたもので、私は豊川さん演じる檜垣という男に絡む謎の女・カナ役、勘九郎さんはタイトルロールのおちょこ役です」
──セリフはどこで覚えるのでしょう?
「家族が眠った後、夜中の12時から朝6時ごろまでが自分の時間なので、一人で脚本を読んだり、セリフをつぶやいたりしてます」
──最後に一言。
「演劇界にとって今年一番の事件と言われる舞台にしたいし、私も、『やっぱり舞台の寺島しのぶはいいよなあ』と言われるように頑張ります」
(聞き手=山田勝仁/演劇ジャーナリスト)
▼寺島しのぶ(てらじま・しのぶ) 1972年生まれ、京都市出身。