緊迫する中東情勢をめぐり、岸田外交のグロテスクな一面が浮き彫りになっている。


 国連安全保障理事会はきのう(15日=日本時間)、イランによるイスラエルへの報復攻撃に関する緊急会合を開催。

グテレス事務総長は「われわれは平和のために努力する責任がある」と訴え、イランとイスラエル双方に最大限の自制を求めた。日本政府はアメリカやイギリス、ドイツなどと共同歩調を取り、イランの報復攻撃を非難している。岸田首相は14日のG7首脳会議で「(イランによる)攻撃を深く懸念し、エスカレーションを強く非難する」と主張。上川外相も同様の談話を発表した。


 そもそも、イランの攻撃のキッカケは、今月1日に発生した在シリアのイラン大使館空爆だ。イランはイスラエルによる攻撃と断定し、報復として13~14日にかけて初めてイスラエル領内を攻撃。

更なる報復を牽制したうえで「作戦終了」を宣言した。


 問題は、イスラエルの行動に関して評価を避け続けている岸田政権の外交姿勢だ。上川氏は5日の会見でイラン大使館への攻撃について「確定的な評価をすることは差し控えたい」と濁し、「国際法上、外交使節団等の公館に対する攻撃は、許されるべきものではない」と一般論で片づけた。



イスラエルには評価控える

 確かに、イスラエルはイラン大使館の空爆について肯定も否定もしていない。しかし、米国防総省のサブリナ・シン副報道官は2日の会見で、空爆について尋ねた記者に「イスラエル政府に尋ねた方がいいでしょう」と答えた。暗にイスラエルの関与を認めているにもかかわらず、日本政府はイスラエルの動きには「確定的な評価」を控えつつ、欧米と一緒になってイランに自制を求めているのだ。


「大使館空爆へのイスラエルの関与は衆目の一致するところであり、日本政府はイスラエルを名指ししないまでも『中東の情勢悪化を憂慮する』と表明すべきでした。それもなしにイランの報復攻撃だけを『強く非難する』のは、ダブルスタンダードではないか。日本の外交原則のひとつは『アジアの一員としての立場の堅持』ですが、今の外交姿勢はとにかく欧米に右倣え。広く考えれば、アラブ世界もアジアを構成しており、日本がアジアの一員として見せるべきは“名誉白人”の姿ではないはずです」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)


 国賓待遇の訪米を終えた岸田首相は、「日米が大切なグローバルパートナーであることを示すことができた」と大ハシャギ。“名誉白人”も極まれりである。