劇場版「名探偵コナン」の最新作「名探偵コナン 隻眼の残像」が、19日に公開され、公開1日目で興行収入10.5億円を突破した。


 158億円の興行収入を記録し、2024年度の興行収入ランキング一位に輝いた昨年公開の「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」公開初日の興行収入は、9.6億円となっており、すでに昨年の記録を更新する形となった。


 さらに劇場版コナンの人気は、劇場だけにとどまらず、日本テレビ系「金曜ロードショー」で4月11日放送された「名探偵コナン 水平線上の陰謀」は、2005年公開の過去作ではあるもののコア視聴率は、同時間帯トップの6.6%を記録。個人視聴率5.7%を上回る異例の数字を叩き出した。


 劇場版コナンの人気に伴い、各映画館では、最新作の上映が30分~40分程度の間隔で行われ、多いところでは30回以上放映する映画館まであるほどの人気ぶりだ。


 また昨年の劇場版の舞台となった函館には、コナンファンが聖地巡礼で訪れ、24年度上期の観光客数は、前年同期比10%増の約345万人と、大きな経済効果をもたらしている。


 劇場版コナンは、なぜここまでの超キラーコンテンツへと進化を遂げたのか?


■原作者の青山剛昌氏が制作過程から守り続けるコナンの世界観


「テレビアニメを通してなんとなく知っている層でも、気軽に二世代、三世代と家族で楽しめる『推理エンタメ』として完成度が高いという部分も大きいですが、コナンの映画は毎作、色々なキャラにスポットを当てており、原作ファンも含めて、劇場版そのものに付加価値がつく作品をしっかり提供していることが、人気の理由の一つと挙げられるでしょう」(アニメ業界関係者)


 劇場版は、原作者である青山剛昌氏が、企画段階から脚本家や監督などと集まり、プロットを作り、時には絵コンテやセリフを修正し、原画も描くなど、制作過程で監修をし、コナンの世界観を守っていることも、劇場版コナンへの信頼度が高い理由といえる。


 その上で、映画でしか味わえないキャラの掘り下げや新事実が加えられており、それが原作や各キャラクターのファンを脱落させずに、かつ新規ファンを取り込む仕掛けになっていると考えられる。


 また劇場版コナンの圧倒的な人気の契機となったのが、2014年以降の劇場版で、黒の組織・赤井ファミリー・公安など、サブ的な立ち位置だったキャラクターたちにフォーカスしたことだろう。


「2016年に公開された『純黒の悪夢』では、原作やアニメ本編では見られない赤井秀一と安室透の因縁のストーリーを描いたことで、ボーイズラブなどを嗜む腐女子層のニーズに応え、腐女子層の獲得に成功しました。また2017年公開の映画『から紅の恋歌』では、平次と和葉、そして紅葉という新キャラクターの恋愛模様をを描き、作中の様々なカップル推しが生まれるなど、恋愛の要素もうまく取り入れ、腐女子以外の女性視聴者層も手堅く獲得。2018年公開の『ゼロの執行人』では“安室の女”という言葉が生まれるほど、安室透にガチ恋する女性層の爆発的な支持を得ました。それらの積み重ねが、劇場版コナンの人気を盤石なものにしたと言えます」(同)


 劇場版コナンは、それぞれが二次元の世界に求める細やかなニーズに対する網を緻密に張った、唯一無二の"総合エンタメ"だ。最新作がどこまで記録を伸ばすか。


(SALLiA/歌手、音楽家、仏像オタク二スト、ライター)


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