【テレビ局に代わり勝手に「情報開示」】
『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系列)はBPO案件になりましたね。局員ではなく外部の制作スタッフが不適切な編集に関わっていたようですが、未然に防げたかというと……私の個人的な経験値をもとに考えると、答えは「限りなくNOに近いYES」とでも言えばいいでしょうか。
こういう「やらせ的」な案件が発生すると、必ず各局で”再発防止策”というヤツが出てきます。取材してきた映像素材の確認を二重に行えだとか、チェック要員を増やせだとか、なんだかもっともらしい内容になっているものですが、まあ番組制作現場の実情を踏まえると、そんな”再発防止策”はほぼ実行不可能。最初のうちこそ生真面目にやりますけど、そのうちテキトーになってきて、だいたい有名無実化します。
今の番組制作体制は非常に分業化が進んでいて、多くの人間が関わっています。取材素材も膨大ですし、いちいち目を光らせることは難しい。正直言って「あるスタッフが確信犯でやっちゃったら、防ぎようはないし分からない」という認識が現実的に正しいでしょう。「やる気にさせたら終わり」なのです。
ではなぜ番組スタッフが「インチキしよう」と思ってしまうのか。これはほぼ間違いなく「追い込まれるから」です。「怒られたくない」とか「なんとかクビにならないように」とか「使えないヤツと思われたくない」とか、そういう気持ちがスタッフの「インチキやる気スイッチ」を押してしまうのです。
■番組内の競争原理…制作会社同士を競わせる局
いま番組制作現場は、「スタッフとスタッフを競わせて面白さを担保する」みたいな、番組内競争をあおる原理で成り立っていることが多いです。もっと言えば制作会社と制作会社を競わせています。
仕事ができる子はいいでしょうが、若干「番組に向かない子」たちは追い込まれます。毎日死ぬほど頑張っても結果が出ない……やっと入れた現場をクビになりたくない……エライ人に怒られ続ける……そして「インチキやる気スイッチ」がONになってしまうのです。
だから「真の再発防止策」はスタッフを追い込まないことしかないのです。そして追い込む原因は確実に「局が制作会社やスタッフにプレッシャーをかけすぎ」なこと以外にはない。遠回りかもしれないが、制作環境を根本的に改善して、基本思想を変えないと、必ずまた同じような問題が起きる、と断言しておきます。
(鎮目博道/テレビプロデューサー、コラムニスト、顔ハメ旅人)
◇ ◇ ◇
NHKドラマは事情が特殊なのだろうか? ●関連記事【こちらも読む】テレビ業界人の筆者の“気になる”…「あんぱん」「べらぼう」なぜNHKのドラマのオープニングは長いのか?…も要チェック。