【テレビ局に代わり勝手に「情報開示」】


 おおーなるほど、そうきましたか。たぶんこれ、2つの理由によってずいぶん変わってきます。

ひとつはインタビューするディレクターの技能、そしてもうひとつはディレクターの性格ですね。


 技能のほうは分かりやすいですかね。インタビューがうまいディレクターがやると、「無駄撃ち」が少なくなるので採用率は当然上がります。インタビューがうまい人とヘタな人の差って結構大きいんですよね。では、インタビューが上手な人は何が違うのか? については後で説明しますね。


「ディレクターの性格」は、「望む答えが出てくるまで粘るディレクターなのか、そうじゃないのか」の差です。僕はどちらかというと「この人はダメだなと思ったらサッサと次に行く」タイプでした。こういう性格の人は、聞く人数が自然と多くなります。中にはひとり捕まえるとしつこく食い下がって聞くディレクターもいて、こういうタイプは手を替え品を替え自分が望む答えを引き出しますから、採用率は当然高くなるんですよね。


 さて、こうした「技能」と「性格」を加味して、多分街頭インタビューの採用率は「高い人で3~5分の1くらい。低い人だと10分の1以下」というところだと思います。街頭インタビューって存外手間がかかりますし、面白い答えに出合うのはなかなか大変なものなんですよ。


■インタビュー上手なディレクターはどうしてる?


「上手な人は何が違うか」ですが、じつはインタビューの成否はほとんど、「誰に聞くかで決まってきます。そもそもほとんどの人は、インタビューしようとしても足を止めてもくれません。「誰が止まってくれそうか」を見抜くだけでも新人には大変です。止まってくれそうな人を見抜いて、さらにその中から「こちらが求めていることを言ってくれそうな人」を見抜いてインタビューしないと、いつまでたっても局に帰れないんです。


 だいたい「待ち合わせしてる人」は答えてくれやすい。だから各局とも「新橋SL広場」とか「銀座和光前」とか、インタビュー場所が決まってきます。最近だと「有楽町イトシア前」が流行ってますね。


 場数を踏むうちに、顔とか、雰囲気とか、同行者の感じとかから「この人だ!」と直感で分かるようになってきます。各局同じような場所で、同じような人に狙いを定めて聞いているので、必然的に「同じ人が各番組によく登場する」ことになるわけです。よく「仕込みなのではないか」と言われることがありますが、そんなことはありません。偶然です。私が若い頃から「またこの人だ」という常連さんがいました。


 でも街頭インタビューって要は、「テレビ局が望む答えを狙って撮っているだけ」なので、「街の声」とか言っても要はテレビ局が完全コントロールしているわけですから、あんまり意味ないんですよね。じつは。


(鎮目博道/テレビプロデューサー、コラムニスト、顔ハメ旅人)


  ◇  ◇  ◇


 著者の過去の記事は?●関連記事『月曜から夜ふかし』はBPO案件に…番組の不適切な編集やテロップは未然に防げなかったんですか?…もぜひ!


編集部おすすめ