〈これを「あんこ」というならば、「毒入りのあんこ」だ〉──。自民党、公明党、立憲民主党が進める年金制度改革法案の修正に、あの“異端児”が噛みついた。


 自公、立憲の3党が26日、年金法案から削除された「基礎年金の底上げ策」について2回目の修正協議を実施。自公が立憲の要求をのみ、「底上げ策」の将来的な実施を法案に明記することで大筋合意した。30日の衆院通過を目指す。


 年金法案を巡っては当初、政府が将来待ち受ける基礎年金の「3割目減り」への対策として、厚生年金の積立金などを活用する「底上げ策」を盛り込むはずが、今夏の参院選を控える議員を中心に自民党内から反対が続出。「底上げ策」を削除した法案を国会に提出した結果、立憲など野党から「あんこのないあんパン」と批判を浴び、修正を余儀なくされた。


 協議後、自民の田村憲久元厚労相は「とりあえずきょうで一段落」とホッとした様子を見せたが、身内からの反対論は根強い。その筆頭が河野太郎前デジタル相だ。


 河野氏は25日、自身のブログなどで年金改革の持論を展開。「底上げ策」を〈毎年、二兆円から三兆円の税金が必要とされる〉〈「毒入りのあんこ」だ〉とコキ下ろし、〈老後の生活の最低保障をするためには保険料方式ではなく、税方式、必要な者に最低保障をすることができる制度が必要だ〉と強調した。


「全額を税で賄う最低保障年金の創設は河野氏の長年の持論。2021年の総裁選でも独自路線として打ち出したが、『増税待ったなし』と逆風にさらされました。一方、『底上げ策』を実施したとしても、将来投入される国庫は今と同じ。

むしろ『河野案』の方が財源のハードルは高い。2008年に河野氏は民主党議員らと最低保障年金の創設を盛り込んだ提言をまとめ、民主党政権が実現に向けて動いたものの、7~8%の消費増税が必要との試算もあって断念した経緯があります。今回こそ自身の“旗印”を失うまいと、自公立の修正に批判を強めているのではないか」(厚労省関係者)


 河野氏は〈厚生年金の積立金を国民年金に流用しようとしている〉と訴え、「目的外利用」との批判も展開している。


「端的に言って『流用』は誤解です。厚生年金加入者が損する話ではありません。今でも厚生年金保険料のうち5%が基礎年金に充てられていますが、それを『流用』とは言わないでしょう。こんな理屈が通ったら、年金積立金の運用も『流用』なはずです」(ある立憲議員)


 年金の抜本改革は必要でも、河野案が暗礁に乗り上げた事実に変わりはない。遠吠えしているだけでは、みっともないゾ。


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