【モーリーの考察】中道政治家の「及び腰」が、少数の右派の声を...の画像はこちら >>
『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、自民党、ひいては日本政治においてなぜ、全体からみれば少数派のはずの「右派」が今も影響力を持ち続けているのか考察する。

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アメリカのトランプ現象や、欧州各国での極右政党の躍進という流れの中で、日本でも右派ポピュリズムや極右勢力が影響力を増しつつあると指摘されることがしばしばあります。

確かに見方によってはそのとおりかもしれませんが、その実態は欧米とはかなり異なっています。

例えば「ネトウヨ」と称される層の存在。選挙結果や各種調査に基づく推定値では、有権者全体のわずか2%前後に過ぎないとされます。

しかし、特にネットでの発信力・拡散力の強さと組織的な動きで実態以上の影響力を持ち、一部の政治家と共鳴して社会を揺さぶっている。最近では、陰謀論めいた議論や排外的な主張が国会にまで持ち込まれることも珍しくありません。

先日の自民党・西田昌司議員による「ひめゆりの塔」を巡る不適切発言のように、あまりにも行きすぎた言動は謝罪や撤回に追い込まれるケースもありますが、多くの場合、じわじわと社会をむしばむような排他的態度はうやむやに流され、周囲が表立っていさめることもない。

かつて"与党内野党"と呼ばれた石破茂首相も、今では同性婚、選択的夫婦別姓、移民政策といった"右派のホットボタン"に対しては、「注視します」「議論します」と繰り返すばかりです。

こういった中道派の及び腰が、少数派の声を過剰に目立たせ、実体以上の影響力を持たせてしまっているように感じられます。

もちろん「少数派だから無視していい」わけではありません。ただ、差別的なことや、"混ぜ物"入りの論理で成り立つ詭弁に対しては、厳しい目を向ける必要があります。

右も左も関係なく、陰謀論の危うさは、完全な嘘ではなく、一片の事実を荒唐無稽な話の中に交ぜることで説得力を持たせる点にあるからです。

また、多くの人が抱える"なんとなくの違和感"をくすぐる手法もよく使われます。

例えば、「同性婚を認めると少子化が進む」「移民を入れると犯罪が増える」「移民のほうが出生率が高いから純粋な日本人がどんどん減る」といった話は、いずれも統計的に否定されています。

それでも、性的マイノリティや外国人に対して"なんとなくの違和感"を抱いている人には、もっともらしく聞こえ、信じられてしまうのです。

こうした現象に対する有力な対抗手段は、政治やメディアが毅然と対応すること。そして、市民ひとりひとりが穏やかに寛容さを表明することだと思います。

私の印象では、日本のマジョリティはマイルドで寛容です。外国人の隣人に対しても、同性婚や夫婦別姓に対しても、「別にいいんじゃない?」と。

しかし政治の世界では、過激な拒絶反応を示す一部の声が大きく響き、結果的に政策・法律の進歩が遅れてしまっています。

今必要なのは「普通の人」、つまり「あなた」が、今までよりも少し寛容さを表に出すことだと思うのです。SNSの書き込みにマイノリティを守る言葉を添えるとか、コンビニで働く外国人従業員に笑顔で挨拶をするとか、それくらいでいい。

デモに参加したり、暴論を吐くインフルエンサーにSNSで論戦を挑んだりといった行動ばかりが政治的なわけではない。マジョリティの優しさが可視化されることで、社会の空気は少しずつ変わっていくはずです。

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