現役世代の将来の年金受給額を増やす改革が“逆風”にさらされている。年金法案の国会提出前から噴出していた誤解が解けるどころか、拡散し続けているのだ。
自民党、公明党、立憲民主党は28日、将来的な「基礎年金の底上げ」を盛り込んだ年金法案を国会に共同提出。30日の衆院通過を目指す。
衆院での審議は28日も含め、わずか2日にとどまる見通しで、国民生活に直結する重大法案の割に拙速感は否めない。ただ、本をただせば、今夏に参院選を控える議員におもねった政府・与党が当初の予定から2カ月遅れで法案を出した挙げ句、肝心の「底上げ」を削除したせいでもある。
厚生年金の積立金を活用する「底上げ」に関し、「厚生年金の流用だ」との批判はいまだ根強い。自公立の3党が年金法案に「底上げ」を盛り込む修正で大筋合意する直前、河野太郎前デジタル相が自身のブログなどで〈厚生年金の積立金を国民年金に流用しようとしている〉などと主張。大臣経験者が発信したせいで、同様の“誤解”が一気にSNS上で拡散した。
公的年金は20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する「国民年金」と会社員などが加入する「厚生年金」の2階建て。国民年金の被保険者は1~3号に分類され、保険料を徴収される。2階部分の厚生年金などに加入している会社員や公務員は「2号」、その被扶養者である配偶者は「3号」、それ以外の自営業者などは「1号」。この誰もが共通してもらえるのが基礎年金だ。
放っておけば将来的に「3割目減り」する基礎年金に、厚生年金の積立金と国庫を活用しようというのが今回の底上げ案。
■国民共通の口座に入れる
「この案は、国民年金(の勘定)に厚生年金からお金を入れるという話ではなく、給付の口座である国民共通の基礎年金に積立金の一部を入れるということ。ほとんどの方が厚生年金と国民年金の時代が組み合わされたキャリアを持っており、その人たちの基礎年金にお金を入れるということなので決して流用にはあたらない」
同じく参考人として出席した大妻女子大の玉木伸介教授も「流用という誤解については一丁目一番地で排除していかなければならない」と訴えた。
厚生年金を積み立ててきた「2号」のサラリーマンが底上げで損をするかのような言説が渦巻いているが、厚労省の試算では、損どころか、現在62歳以下の男性と66歳以下の女性は受給額が増える。それでも反対論者は「流用」と言い続けるのか。
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年金制度改革関連法案が、28日衆院厚生労働委員会で審議入り。しかし、国民民主党が修正案に反発。とにかく異議を唱えて存在感をアピールしたいだけなのかも? ●関連記事【もっと読む】また出た!国民民主党の“二枚舌”…年金修正法案に「財源が示されていない」どの口が?