医療現場を熟知する医師が夏の参院選に参戦だ。


 35年以上にわたって高齢者専門の精神科医を務め、「80歳の壁」などの著書がある和田秀樹氏が9日に、新党「幸齢党」を立ち上げる。

参院選の比例代表での候補者擁立を予定し、既に数人が手を挙げているという。


 和田氏本人は党代表を務めるが、立候補はしない。9日に記者会見を開き、正式に発表する。選挙戦では、少子高齢化対策として「医療改革」の必要性を訴える見込みだ。


■薬の「多剤併用」問題を訴える


 和田氏は日刊ゲンダイの取材にこう語った。


「いまの日本の医療は『正常値信仰』のもとに多量の薬が処方され、結果的に医療費の増大を招いている。日本の大病院ではいわゆる『内科』がなく、消化器内科、呼吸器内科、循環器内科という形で細分化されており、一人の患者が複数科を受診することで薬の種類が増えがちです。患者の全身を診られる総合診療医を育て、こうした多剤併用を防ぐことで、給料から天引きされる保険料を年間約6万円減らすことができるとみています」


 多剤併用は、特に高齢者にとって大きな弊害がある。東大病院の老年病科の入院データベースによると、飲んでいる薬の数が6種類以上になると、薬物の副作用による有害事象が急激に増える。5種類以上の服用で「転倒」の発生頻度が40%超上昇するデータもある。多剤併用は肝臓に過度の負担をかけ、意識障害を起こすリスクがあるため「転倒」につながるのだという。高齢者にとって深刻な問題だ。


「人生100年時代といわれますが、ヨボヨボでの長生きは避けるべき。高齢者が幸せに生き生きと過ごすことができれば、人手不足が解消され、消費が増えることで経済も強くなる。現役世代にとっても非常に重要な観点です」(和田氏)


 先月28日に発行した「幸齢党宣言」(幻冬舎新書)では「国家予算で、薬を減らす研究をします」など、10個の提言を掲げている。選挙戦で注目を浴びそうだ。


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