コメ担当大臣を自任する小泉進次郎農相の猪突猛進により、石破政権は息を吹き返した。内閣支持率は下げ止まり、政府備蓄米の叩き売り効果で米価高騰も頭打ちの気配。
ANNの世論調査(7、8日実施)によると、内閣支持率は前月比6.8ポイント増の34.4%。競争入札から随意契約に切り替えた進次郎方式の備蓄米放出について「評価する」が72%を占め、「買いたい」との回答が48%に上った。税込みで5キロ2100円ほどの備蓄米の売り出しは当初、都市部に偏っていたが、現在は北海道から鹿児島まで各地で販売中。沖縄でも今月中旬に流通する見通しだ。
「そもそも、人口が集中する都市部と比べ、地方は需要が少ない。有権者が多い都市部からバラまくことで、コメ高騰への不満をより早く沈静化できる。だから、都市部偏重に目をつぶってきたのです」(与党中堅議員)
進次郎氏が備蓄米のバーゲンセールに舵を切ったため、約90万トンあった備蓄米のうち、計61万トンは放出済みか今後放出予定だ。残り30万トン弱についても、進次郎氏は「必要であれば無制限に放出する」としていて、無関税のミニマムアクセス(MA=最低輸入量)による主食用米の輸入前倒しも検討している。例年9月以降に実施されるが、9日も「価格高騰に対して最大の効果が発揮できるあり方を模索したい」と強調していた。
倉庫会社も農家も手当て
あわせて俎上に載っているのが、輸入による備蓄米の補充だ。低温倉庫で保管するため、維持費は年間478億円に上る。バラマキのしわ寄せは倉庫会社に及び、受け取るはずの保管料が1カ月当たり計約4.6億円失われる見通しで、廃業を検討する事業者もいるという。
「農相が進次郎氏に交代後、備蓄米放出の条件としていた政府による買い戻しを撤廃した。新米の買い付け競争は激化し、25年産で手当てする見込みは立たない。それで、MA枠外で米国産カルローズ米を輸入し、備蓄米に充てる案が浮上しています。大量購入すれば値切れるし、倉庫会社の不安も解消できる。むろん、絵を描いているのは財務省です。一方、財政再建派の森山幹事長は、物価高対策として野党が求める消費税減税を突っぱねた見返りに、農家向けの新たな予算をねじ込んだ」(霞が関関係者)
農水族でもある森山幹事長は党の食料安全保障強化本部長として、5年間で2.5兆円規模の予算を石破首相らに要求。農家の所得向上などを目的とし、通常の農林水産予算とは別建てだ。
昨秋の党総裁選で抜け作ぶりをさらした進次郎氏は人気が再燃し、首相のイスを引き寄せつつある。農水族は新予算獲得にほぼ成功し、財務省は消費減税阻止。ついでに言えば、コメの輸入拡大はトランプ米大統領にとってもグッドニュース。これぞ焼け太りだ。
◇ ◇ ◇
備蓄米をめぐる一連の騒動は、さながら“踊る進次郎コメ劇場”だ。関連記事【もっと読む】【さらに読む】で詳しく報じている。