また面白いBS番組が誕生してしまった。今月3日から4週にわたって放送されていた「鈴木もぐらの雀荘放浪記」(BS-TBS)のことだ。


 同番組は空気階段・鈴木もぐらが地方の雀荘を巡り、ご当地グルメを楽しみ、地元住民の人情に触れる一風変わった旅バラエティー。第1回、第2回は山形県を訪れ、道中の人々におすすめの雀荘を聞きながら、熱い対局を目指し歩を進めていった。


 まず初回冒頭で飛び込んできたのが、サングラスをかけたもぐらだ。今年2月に人工股関節の手術を受けて“メカ状態”となり、「よりもぐら感を強めたい」との意向からだという。そんなメカもぐらに、次々とハプニングが巻き起こる。


 ヘアサロンで散髪&ヒゲを剃ってゲンを担ぎ、タクシー運転手に教えてもらった雀荘の場所に向かうと営業前で入れず。その後、腹が減ったと山形駅前から赤湯までタクシーで1時間かけてラーメン店「龍上海」に行けば定休日。続いて、地元の若者がスマホで発見した雀荘に向かったところ、立派な一軒家が現れたシーンには唖然としてしまった。


 住居を兼ねた特殊な雀荘で、ご当地のルールにのっとり常連の2人と3人麻雀に臨むもぐら。“一番持ち点の少なかった者が飯代をおごる”という罰ゲームありの10局の真剣勝負だ。途中、もぐらが注文したカレーを食べながら打ち、捨て牌で「ロン」となってハッとするシーンが忘れられない。


 最終局を終え、もぐらは敗北を喫する。

「私の完敗に乾杯!」と常連の知人を含めた5人分の飲食代をおごり、宿泊先の旅館の湯船に足を入れ真っ裸で「熱っ!」と悲鳴を上げるもぐらまで捨てるところなしだった。


 プロデューサーは、「水曜日のダウンタウン」の演出など幅広い分野で活躍するTBS局員の藤井健太郎氏。「空気階段の踊り場」(TBSラジオ)で時折もぐらが語っていた地方の雀荘巡りエピソードに興味を持ち、「映像でも見てみたい」と本人に声を掛けて実現に至ったという。


 借金、ギャンブル好き、遅刻魔、不摂生。これに加え、学生時代にロックバンド「銀杏BOYZ」に心酔し、ライブに足しげく通っていた過去を持つもぐら。金もないままライブに出向き、ボーカル&ギターの峯田和伸からハンバーガーをおごってもらったり、峯田が宿泊するホテルの部屋で一緒に寝させてもらったりしたこともあるという。


 そんな人間味あふれるもぐらを藤井氏が放っておくわけがない。また、安田大サーカス・クロちゃん、チャンス大城、ダイアン・津田篤宏、ひょうろくら個性派を取り上げてきたヒットメーカーが、昨今注目を浴びるBS番組でもぐらにスポットを当てたところにもセンスを感じた。


 放送は終了してしまったが、現在も「TVer」で視聴可能。すごい番組なので、ぜひチェックしてみて欲しい。


(お笑い研究家・鈴木旭)


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