「ヤマタツの(ギター)カッテング、ヤバいな!」


 若者が興奮気味で仲間と話していたのは7月26日、苗場スキー場(新潟)で行われた「FUJI ROCK FESTIVAL '25」GREEN STAGEで行われた山下達郎(72)のライブである。アリーナのような大規模会場ではライブはせず、チケット入手困難で知られる山下達郎が出演するとあって、26日のチケット(1日券、3日通し券)は早々に完売した。


 フジロックは初開催が1997年で、当初から通うファンも多く、観客の年齢層が高いのが特徴。子連れファミリーも多いのだが、今回目立ったのが“オーバー60世代”と“ファミリー3世代参戦”だ。ステージ後方エリアでは親世代の夫婦とその子供(孫)、おばあちゃんといったファミリーを多く見かけた。「夏休みは一家でフェスに行くのが娘家族の恒例行事で、山下達郎が出るというので私も便乗しました」(60代女性)という。


 当日は午後から大雨。屋根もない中、屋外で半日雨に打ちひしがれ、雨が上がったのはレジェンド登場の30分前。サイドの大型ビジョンにニット帽の達郎の姿が映し出され、「よろしく!」の声に会場のボルテージは上昇した。


 近年、音響編集技術が向上しすぎた結果、ライブが劣るアーティストも増えているが、達郎の生歌はレコード発売当時と変わらず、むしろそれ以上。年齢を感じさせるどころか、キャリアが培ったパワフルで研ぎ澄まされたギターカッティングで聴衆を魅了。会場のGREEN STAGEは超満員、通路はほぼ通行止め状態になっていた。


「呼んでいただいて本当にありがとう。その上こんなに集まっていただいて、重ねて重ねてありがとうございます。

私はおかげさまで今年デビュー50周年を迎えることができました」「50年もやっていると、こういうところで何をやるか迷って迷って」と語った達郎。ミスタードーナツのCMでおなじみの「ドーナツ・ソング」など、ステージに立つ達郎は気さくなアーティストといった印象で、会場は達郎ミュージックにのみ込まれた。


 妻でもある竹内まりや(70)へのプロデュース曲「プラスティック・ラヴ」を演奏すると、途中竹内がサプライズ登場し、後半は竹内が歌唱。歌い終えると颯爽と走り、次はコーラスに加わるという演出。大型ビジョンには達郎の演奏の後ろに竹内がコーラスに立つ姿が映し出され「RIDE ON TIME」「アトムの子」など誰もが知る名曲が続き、最後は1人ハンドマイクで「さよなら夏の日」を歌い上げ、計10曲を披露した。


 また同日深夜には“80年代シティー・ポップ”ブームを牽引するDJ、Night Tempo(39)もプレー。竹内との「プラスティック・ラヴ」をリエディットでYouTube700万再生を記録し、若年層や世界に山下達郎、竹内まりやの名前を拡散させた張本人でもある。そんなNight Tempoのシティー・ポップブームで達郎を知った若年層たちの心も生演奏でガッチリ掴んでいた。


 今年50周年を迎えるのは山下達郎のほか、矢沢永吉(75)、甲斐バンドなど、ビッグアーティスト揃い。”達郎ミュージック”は音楽配信サイトのサブスク配信に参加せず、今回のライブ配信もナシ。それでも会場を丸のみにする。2023年には、故ジャニー喜多川氏の性加害問題に関する発言で物議を醸した達郎だが、カリスマぶりは健在だ。


  ◇  ◇  ◇


 80年代を彩るレジェンドたち。関連記事【もっと読む】杉真理さん「あの時は緊張しました」 大滝詠一さんとスタジオで初共演した思い出のショット…も併せて読みたい。


編集部おすすめ