「カラオケ印税ゼロ円っていうのは…ウソだね(笑)」伝説のヒップホップグループ「SOUL'd OUT」元メンバーが語る絶頂期&パフォーマンス秘話
「カラオケ印税ゼロ円っていうのは…ウソだね(笑)」伝説のヒップホップグループ「SOUL'd OUT」元メンバーが語る絶頂期&パフォーマンス秘話

2000年代、独特なリズムとパフォーマンスで多くの若者を魅了した伝説のヒップホップグループ・SOUL'd OUT(ソウルドアウト)。その元メンバー、Bro.Hiが都内の和食料理店で板前をしているという。いったいなぜ? かつての音楽活動の話とともに聞いた。(前後編の前編) 

ダントツで好きだったのはガンズ・アンド・ローゼズ 

「すみません、Bro.Hiさまはいらっしゃいますでしょうか?」

東京都内のとある飲食店に電話をかけると、電話越しに返ってきたのは、「はい、私ですが」という丁寧で落ち着いた声だった。

メインボーカルのDiggy-MO’(ディギー・モー)、トラックマスターのShinnosuke(シンノスケ)、そしてヒューマンビートボックスを担当するBro.Hi(ブラザー・ハイ)の3人で結成されたSOUL'd OUTは、「ウェカピポ」や「Dream Drive」など、数々のヒット曲を飛ばした。

そんな人気グループの元メンバー・Bro.Hiが、現在も音楽活動を続けながら、東京・羽村市の和食料理店で板前として腕をふるっているというウワサを聞きつけ、取材を申し込んだのだ。

快く取材を快諾してくれたBro.Hiさんに会うため、彼の経営する料理店のドアを開く。

「初めまして。今日はよろしくお願いします。」

帽子を取り、記者に深々と頭を下げるその姿は、SOUL'd OUT時代と変わらぬBro.Hiそのものであった。

さっそく、グループ結成当時の話から現在の活動までをたっぷりと伺った。

――音楽活動を始めたきっかけはどんなことでしたか?

Bro.Hi(以下、同) 中学生の時、ちょうどバンドブームだったから音楽好きではいたんだよね。ビートたけしの『元気が出るテレビ』でダンスも流行ってたね。

当時は青春パンク、175ライダー系の音楽とかブラックミュージックも聞いていたけど、ダントツで好きだったのは海外のガンズ・アンド・ローゼズ。曲は「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」から入ったかな。 

――マイクを握ったきっかけはDiggy-MO’さんとの出会いとのことですが?

二十歳ちょい前、バンドでドラムやってたんだよね。だけどバンドって紆余曲折あるし、なかなか難しかったんだよね。だったらメンバーの多いバンドより、ユニットの方が早いんじゃないか?となって。

じゃあドラムは必要ないな、俺は何をやろう? と考えた時に、DJはまた一からになるしな、と。自然な流れでボーカルになった感じかな。

――Bro.Hiさんといえばヒューマンビートボックスのパフォーマンスにも圧倒されますが、そのスキルはどのように磨かれたのでしょうか?

当時、ネットはあったけど今みたいにユーザーも多くなかったから、少ない情報から探していたかな。あとは、CDを聞いて雲を掴むような気持ちで自己流で勉強してた。ヒューマンビートボックスができると、機材がなくてもある程度ライブが成り立つから便利だよね。できるからやっていたけど、やっぱりやってて楽しいからね。

「カラオケの印税」にまつわる都市伝説 

――学生時代はどのような性格でしたか。

暗くはなかったし、どちらかというと名前のとおり活発な方かな。アウトドア派だから釣りをしたり。ゲームは今も好きで、やりたいけどその気持ちをおさえてるね。今、お店もやってるから時間泥棒になっちゃう。

グループ当時、Diggy-MO’は流行り物には奥手なタイプで、ファミコンやスーファミが好きだったりとかね(笑)。良き思い出です。

――SOUL'd OUTといえば、圧倒的なマイクパフォーマンスも話題になった一方で、「真昼間だからフライドポテト 塩が足んねえよ 笑いとまんねえよ」など、特徴的な歌詞が今もネット上で騒がれていますよね。ご自身ではどのように感じていますか?

ネットのアレは、別に嫌な気持ちはないし嬉しいは嬉しいかな。個人的にはネットミーム好きなんで、全て調べきれてはいないけど、アンテナは立ってる方なのかも。

芸人のエハラマサヒロさんやぬまんづさんがネタにしてくれてるのも笑わせてもらってます。この前は、SOUL’d OUTの曲に合わせておにぎりを握る投稿がXでバズってたみたい。

時折そういう全然知らないデッドボールみたいなのが飛んでくることもあるから面白いよね。

――SOUL'd OUTの曲はどれも非常に高度でカラオケで歌うには難易度が高いですよね。そのため、あれだけ大ヒットしたのに歌える人が少なく、カラオケの印税が全く入って来なかったという都市伝説は本当なのでしょうか。

カラオケ印税自体どういう計算方法なのかわかってないからあまり気にしてないけど、今でもちょいちょい歌ってくれてる人はいるからね。ゼロ円っていうのは…まあウソだね(笑)。

――曲作りではテーマや工程はどのように決まるのでしょうか?

これは曲によるかな。たとえばDream Driveは冬のドライブソングが作りたかったけど時期的なもので夏のものになったりとかもあったね。

曲により発起人が違うんだけど、しんちゃん(Shinnosuke)があらかじめ作った曲を変えていくとか、曲が先にあって歌詞が後で決まることが多かったかな。

――ちょっとコアな質問になりますが、歌詞の中で、「YO!」という部分がDiggyさんは「A-yo」、Hiさんは「E-yo」となっていることが殆どですが、意図的にそうしているのでしょうか。

これは、それぞれのクセなのかな。yoもそうだけど、歌詞に書かなくてもいいものもあるし。

今やyeaもhもない場合もあるし、好みの問題かも。歌詞の中のこだわりは曲によるけど、この曲は言葉選びはリアルにしよう、とか、この曲は気にせずに言葉遊びで組もうというものもあるかな。

――活動中に、メンバー同士のプライベートな交流はありましたか?メンバー皆、クールなイメージがあるのであまり想像ができませんが…。

交流どころか、家族より一緒にいるわけだからね。地方のラジオのプロモーションなんかだと2週間ずっと一緒にいたりとか。毎日一緒にいたから、打ち上げ以外のプライベートで飲みいこうぜ!とかはあまりなかったかな。

素人時代から関係性は変わらないし、頻度は減ったけど今も用事があれば連絡とるしね。お店を開業したから、共通の知り合いがきたら、誰々がきたよと連絡する感じかな。

そうすると「懐かしい!」と返信があったりね。しんちゃんは何回か食べにきてくれてるよ。

後編では、Bro.Hi自身が板前をしているという、和食料理店について話を聞く

取材・文・撮影/佐藤ちひろ

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