「コメを作るな、ではなく、農業者が増産に前向きに取り組める支援に転換する」ーー事実上の減反政策に区切りをつけ、増産にカジを切った。8月5日のコメの安定供給に関する関係閣僚会議で、石破首相は需要を見通せず生産量が不足し、価格高騰を招いたと認め、冒頭のように政策転換を表明。
コメの需給逼迫について、小泉進次郎農林水産大臣は会議後の囲み取材で、①高温障害により精米後に残ったコメの割合を示す「歩留まり」の悪化②インバウンド需要の増加③コメ不足への不安から家計の購入量や「ふるさと納税」の返礼品需要の増加ーーを理由に挙げた。コメ増産への転換を生産者はどう受け止めるのか。
「急にコメを作れ、と言われても農家が増えないと増産できません。若者が就農したくなる環境づくりに向けた具体策はもちろん、まずは目先の気候変動対策が先決です」と語るのは、静岡のコメ農家で「藤松自然農園」の藤松泰通代表だ。
■「自家採種」奨励を求める生産者
殺人的な猛暑が続き、5日は群馬県伊勢崎市で41.8度を観測し、またもや国内統計史上最高気温を更新。40度超えは過去最多の5都県計14地点に上った。全国の米どころは暑さと記録的な少雨のダブルパンチで田んぼはひび割れ、ため池は干上がり、イネの一部は黄や茶色に変色。害虫大量発生の兆しもあり、危機感を高めている。藤松氏が言う。
「2025年産米の作付面積は増えていますが、この異常気象で黒や茶色の斑点米や、未成熟の白濁米の発生が増える懸念は強い。増産しても主食用の品質を保てなければ生産者の所得は減ってしまいます。
菅政権の環境相時代に「気候変動への取り組みは、セクシーであるべきだ」と言い放った進次郎氏。そのセクシーさが、足元のコメ政策には欠けているんじゃないか。
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政府備蓄米が売れ残っている。小泉農相はどう対応するのか。●関連記事【もっと読む】『減反からコメ増産へ転換も、猛暑続きで不作懸念…進次郎農相に欠ける気候変動対策の“セクシー”さ』で詳報している。