6月6日の公開から77日で興行収入110億円を突破したのが、吉沢亮(31)主演の映画「国宝」。03年公開の「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(同173.5億円)に次ぐ大ヒットで、“国宝ブーム”にあやかりたいのが歌舞伎界だ。


 吉沢が演じる女形の才能を見いだされた任侠の息子が上方歌舞伎の名家に引き取られ、その家の御曹司と切磋琢磨して芸道を極めていくストーリーに多くの人が引き込まれる中、一人の男の動向に注目が集まっている。


 12月26日に公開が予定されているのが、天海祐希(58)主演の人気ドラマ『緊急取調室』シリーズ(テレビ朝日系)の完結編となる『劇場版「緊急取調室 THE FINAL」』。当初、23年6月16日に公開が予定されていたが、公開延期と撮り直しを余儀なくされた経緯がある。


 公開まで1カ月に迫った23年5月18日、4代目市川猿之助(49)が両親と一家心中を図り、父・段四郎さんと母親が死亡する事件が発生。猿之助は一命を取り留めるも、自殺幇助の疑いで逮捕。劇場版で猿之助が総理大臣役に起用されていたことから、公開は延期。石丸幹二(60)を代役に撮り直しを行い、ようやく年末の公開にこぎつけたのだ。


 懲役3年執行猶予5年の判決が確定し、現在、活動休止中の猿之助の復帰がささやかれたのは今年初めのこと。


「ファンのバイブルと言われる歌舞伎役者の名鑑『かぶき手帖』は、猿之助の一家心中事件の影響で2024年度版の発売は取りやめになりました。2年ぶりに発売された25年版では、執行猶予中の猿之助に1ページが割かれています。かぶき手帖の発行元は日本俳優協会、松竹、伝統歌舞伎保存会であることから、猿之助の存在を抹消していないどころか、歌舞伎界が早期の復帰を期待している節すら感じられます」(スポーツ紙記者)


■スキャンダル報道に悩んだ末に両親を巻き込む


 国宝効果で本物の歌舞伎を見たいという若い世代が増えている中、歌舞伎界がブームに便乗したいのは当然だろう。


「『国宝』で吉沢が色気のある女形を演じていますが、猿之助も女形を多く演じ評価されてきたことで知られています。

猿之助の名跡を返上していない上に、かぶき手帖では〝人気、実力、才気煥発と三拍子揃った役者である〟と紹介されているように、実力者である猿之助の復帰を業界が望むのは無理もありませんが、果たしてそう簡単にいくものでしょうか」(芸能ライター)


 猿之助とはケースが異なるが、19年に麻薬取締法違反の容疑で逮捕され、懲役1年6月執行猶予3年の判決を受けた女優の沢尻エリカ(39)は23年2月に執行猶予が明けているが、舞台で復帰したのはその1年後のこと。


「猿之助の執行猶予が明けるのは28年ですが、その前に何らかの形で表舞台に出る可能性も囁かれています。しかし、女性週刊誌に報じられた自身のスキャンダルに悩んだ末、両親を巻き込んだ身勝手な一家心中だっただけに、判決の際に“量刑が軽すぎる”“執行猶予付きはおかしい”といった声があがっています。ファンはともかく世間から復帰がすんなり許されるのかは微妙なところではないでしょうか」(前出・芸能ライター)


「許されるのであれば、歌舞伎界に戻り、舞台に立ちたい」と語っている猿之助が〝一家心中〟の十字架を背負い、我々に姿を見せる日はやってくるのか。


(本多圭/芸能ジャーナリスト)


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