【今週グサッときた名言珍言】
「鹿賀丈史、市村正親、堂本光一……斎藤さんだぞ」
(斎藤司/フジテレビ系「さんまのお笑い向上委員会」8月16日放送)
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何も考えずに見ても笑える、底抜けに明るいハゲネタ漫才で2015年のM-1グランプリ(テレビ朝日系)を制したトレンディエンジェル。斎藤司(46)はその後、伝統あるミュージカル「レ・ミゼラブル」のキャストにも抜擢された。
ミュージカルの聖地・帝国劇場が建て替えで一時休館する際に放送された「さよなら帝国劇場 最後の1日」(日本テレビ系)にも出演。そのスゴすぎる共演者たちと名を連ねたことを自身のギャグを交えて表現したのが今週の言葉だ。
そんなはた目からは順風満帆な芸能生活に見える斎藤だが、肝心の本職であるお笑いでは“スランプ”に陥っているという。代表的ギャグである「チェケラッチョハゲラッチョ」も「別におもろないでしょ」と吐き捨て、「俺、もう面白いことひとつも思いつかない」と嘆く。相方のたかしが考えたボケを紙に書いているだけの書記状態だという。
私生活でも一時期、競馬にハマり、1000万円を超える損失を出してしまった。その補填をするためにTikTokで投げ銭をもらう配信を始めたそう。それは駆け出しの芸人がやるものでM-1王者がやるものじゃないのではないかとツッコまれても「プライドじゃ飯食えないから」(テレビ東京系「あちこちオードリー」25年7月30日)と力なく返した。
相方のたかしによると「『M-1』を取ったことによって燃え尽き症候群になった」(「あちこちオードリー」23年11月1日)という。本人も「あの日、面白かっただけ」(日本テレビ系「大悟の芸人領収書」25年5月19日)とネガティブ。「満足いく毎日じゃない。
その芸風から「明るい」と思われがちだが「高校時代は3年間で3言くらいしかしゃべらなかった」(同前)というほど暗い性格。だから、ひな壇などではまったく力を発揮できないという。Netflixの「トークサバイバー!」のオファーもあったが、うまくできないかもという理由で断ってしまった。
そうした斎藤のネガティブな部分を吐露したトークがにわかに注目され始めている。大悟も「明るく振る舞ってた斎藤より、今の雰囲気の方がオモロいかも」(同前)と再ブレークを予感している。底抜けに明るいハゲネタの中にほのかに哀愁が漂うのは、斎藤のネガティブな魅力によるものに違いない。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)