【碓井広義 テレビ 見るべきものは!!】


 夜ドラ「いつか、無重力の宙で」(NHK)が、いい出足を見せている。


 主人公は大阪の広告代理店で働く30歳の望月飛鳥(木竜麻生)。

社内では「できる人」と評価されているが、実際は「便利な人」として仕事に忙殺される毎日だ。


 ある日、高校時代の友人・日比野ひかり森田望智)が現れる。天文部の仲間だったが、13年ぶりの再会だ。ひかりは高校生の頃の「いつか宇宙へ行きたい」という夢を持ち続けていた。だが、現在は「血液のがん」を患っている。飛鳥は同じ夢を抱いていた自分が、それをどこかに置き忘れてきたことに気づく。


 このドラマの見どころは、彼女たちが過去の自分と現在の自分を交錯させながら、「超小型人工衛星」をつくって宇宙を目指すという新たな「夢」に挑んでいく姿だ。


 また今回ヒロインを務める木竜にも注目したい。女優デビューは11年前で出演作品は多い。CMでもよく見かけるが、顔と名前がなかなか一致しなかった。おかげで本作の木竜は新鮮で“第2のデビュー”になりそうだ。大人になってからの葛藤や社会的な責任。

それに伴うプレッシャー。自身が抱える「迷い」や「再生」への歩みを等身大の自然さで演じている。


 脚本は、昨年の特集ドラマ「高速を降りたら」(同)でデビューした武田雄樹のオリジナル。その丹念な語り口が見る側の共感を生んでいく。


(碓井広義/メディア文化評論家)


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