家庭で暮らすことが難しい子どもや、社会的養護を離れた若者をどう支えるかは、日本社会が抱える長年の課題である。こども家庭庁によると、児童養護施設で暮らす子どもの71.7%に虐待経験があり、42.8%は何らかの障害を持つ。
施設での生活だけでなく、その後の進学や就職、自立まで見据えた支援が求められている。

【その他の写真:施設を訪問する駒居社長】

児童養護施設を離れた後は、住まい、進学費用、就職、人間関係を同時に整えなければならない場合もある。制度による支援に加え、自分とは異なる進路を実際に歩んだ先輩の存在は、将来を具体的に思い描く手掛かりになる。経営者が自らの背景を語ることにも、金銭的な寄付とは異なる役割がある。

この課題に、自身の経験と経営者としての活動を通じて向き合っているのが、株式会社Levelaの代表取締役、駒居康樹氏である。「施設で一緒に過ごした子どもたちは、本当に兄弟のような関係でした。中学生、高校生の頃から、同じような境遇の子どもたちに何かできないかと考えていました」と振り返る。

起業を具体的に意識したのは、20歳の時だった。「20歳の誕生日に祖父の葬式へ参列しました。それをきっかけに、自分はどう生き、どう死んでいきたいのかを考え、人生でやりたいことを全部書き出したんです」。実現に必要な資金を計算した結果、会社員として用意された道を歩くだけでは届かないと感じ、起業を人生の選択肢に加えた。

もっとも、そこからすぐに事業が定まったわけではない。
学生時代のインターンを経て、通信会社の代理店でスマートフォン販売に携わり、自ら顧客を開拓する営業を経験した。顧客との接点を増やすためにInstagramを始めたものの、最初の約2年間は思うように伸びなかったという。

転機になったのは、発信内容を絞ったことだった。ビジネスや暮らし、夫婦関係など幅広かった投稿を、iPhoneの使い方や豆知識へ集中させたところ、4ヶ月でフォロワー5万人を獲得。投稿を見た人からスマートフォン購入の相談が相次いだ。情報発信が認知だけでなく、実際の仕事につながることを初めて実感した。

周囲の営業担当者が紹介を求めて一件ずつ訪問する一方、駒居氏はInstagramのストーリーズで情報を届け、一度に多くの相談を受けられるようになった。単にフォロワーが増えたのではなく、自分の知識を必要とする人へ届ける方法が変わり、働き方そのものが変化した。この経験から、SNSで培った知識を人に伝える仕事へ可能性を感じ、副業でInstagramのコンサルティングを始めた。

そして、2022年11月に株式会社SnsCool(現・株式会社Levela)を創業。現在、同社は「人生を変えるきっかけになる」をミッションに掲げ、Instagramスクール「SnsClub」を運営している。そこで教えるのは、目立つ方法だけではない。
過去の経験や得意分野を整理し、誰に何を伝えるのかを定め、発信を仕事へつなげる考え方である。

施設で育った経験も、SNSが伸びなかった時間も、隠すべき弱点ではなく、他者に届く物語になり得る。自分自身の選択肢を増やした発信力を、次の人へ手渡す事業へ変えた駒居氏の歩みが、その考え方を示している。

また、事業で得た力を社会へ還元する姿勢も明確だ。取材では、自身が育った児童養護施設へ1,000万円を寄付したことを明かした。日本こども支援協会のCSO(最高戦略責任者)も務めている。「施設出身の僕が活躍する姿そのものが、子どもたちの希望になれる。『どんな環境でも、頑張れば道はひらける』それを身をもって証明し続けたい。この活動は、これからもずっと続けていきます」と語る。

社会貢献を掲げる経営者は少なくない。しかし、駒居氏の場合は、支援を受ける側だった経験、発信に苦戦した時間、事業を通じて得た成果が、一つの流れでつながっている。寄付額や経歴だけではなく、自らの過去を隠さず、同じような境遇にいる子どもたちが未来を描くための材料へ変えようとしている点に、この活動の意味がある。


取材を通じ、駒居氏が広げたいのはSNSの使い方だけではなく、「自分の背景は将来を決めるものではない」という実感なのだと感じた。事業を通じて得た力を、同じような境遇にいる子どもたちの希望へどうつなげていくのか。駒居氏と同社のこれからを見届けたい。
【取材/執筆:Y.U】
編集部おすすめ