プロレスラーの“インドの狂虎”タイガー・ジェット・シン(本名・ジャグジット・シン・ハンス)が17日、代々木第二体育館で行われたゼロワンの工藤めぐみGMの40周年記念大会「邪道姫伝説」で観客をサーベルで殴打する「事件」が発生した。

 試合を取材したスポーツ報知のプロレス記者が「殴打事件」の舞台裏を明かす。

 まず今大会にシンが参加した経緯、来日後の行動は以下の通りになる。

 現在、82歳のシンは、FMW参戦時に交流があった工藤からのゲスト参加オファーを受け快諾。15日に息子のタイガー・アリ・シン、孫のサージャンさんと共に2012年以来、14年ぶりの来日を果たした。

 16日午前には横浜市内の総持寺を訪れ宿命のライバルだったアントニオ猪木さん(享年79)の墓所を墓参りした。午後には73年11月5日に猪木さんを襲撃した伝説の「新宿伊勢丹前」を訪れ、偶然、通りがかった“太陽神”Sareeeと記念撮影を行った。

 大会当日。シンは、第10試合の藤波辰爾、船木誠勝×越中詩郎、長井満也戦で特別立会人を務めることになっていた。

 試合の2時間ほど前に控室に入ると新日本プロレス時代にレフェリーだったミスター高橋、マリーゴールドのロッシー小川代表ら関係者と写真撮影に応じていた。

 迎えた試合。新日本プロレス時代に幾度も対戦した藤波。さらに越中とは94年11月に東京ベイNKホールで行われた「平成維震軍」オープニングマッチで対戦するなど数々の遺恨がある。

 長井、越中、船木、そして藤波が入場。

直後にテーマソング「サーベルタイガー」が館内に鳴り響くと黄色を基調にしたターバンを巻き、サーベルを口にしたシンが息子のアリ・シン、孫のサージャンさんと共に花道に登場した。

 サーベルを口にくわえ、手にしリングへ向かうと客席へなだれ込もうとした。木原文明リングアナウンサーが「お気を付けください!」と絶叫。この時、シンは男性客の頭部をサーベルで殴打したのだ。

 私が座っていた記者席から花道は見にくかったため、肉眼では殴打した事態は確認できなかった。

 シンは、リングインすると藤波とにらみ合い唾を吐きかけ挑発。一触即発の事態となったが、笑顔を浮かべ藤波と熱い抱擁をかわし腕を上げた。続けて記念撮影を行うも今度はアリがセコンドの若手選手を蹴散らし再びリング上は大混乱。リング上に嵐を吹き、風を呼んだシンは、リングサイドで試合を見守った。

 ゴングが鳴ると場外戦に突入。シンはイスを藤波へ投げつけるなど立会人とは思えない蛮行を働いた。

 私も記者席から試合を取材していた。

シンが観客を殴打したことを知ったのは試合中だった。

 記者席に来た関係者が私に「シンがお客さんを殴って、頭から流血させてしまった。今、お医者さんが緊急で処置している」と教えてくれたのだ。この方はプロレス界に長年、携わっており、深刻で慌てた口調から不測の事態を私は悟った。

 試合が終わり、バックステージへ向かうと、男性が座り込みリングドクターがガーゼで頭部を押さえ止血処置を施していた。その周りを複数の大会関係者が心配そうな表情で見守っていた。関係者に話を聞くと、主催者が都内の病院へ救急搬送するため119番通報したことを確認した。

 私は、大会を運営するゼロワンの神尊仁代表を取材。観客が負傷した理由を確認すると、やはりシンの殴打が原因だったことを認め「お客様に大変、申し訳ないことをしてしまいました。心から謝罪いたします」と頭を下げ、今後の治療費などは「誠心誠意対応させていただきます」と明かした。

 男性は、Sareeeの赤いTシャツを着ており、別の関係者によると「Sareeeのファンでリングサイドの席をお買い上げいただいていました」と明かしてくれた。Sareeeはメインイベントに出場していたが男性は負傷し治療のため、お目当てのSareeeの試合を観戦することはできなかった。

それだけに関係者は「Sareeeの試合にご招待させていただくなど、対応させていただいます」と最大限の配慮をすることを約束した。

 男性はおよそ30分ほどバックステージで処置を受けると、救急車が到着し担架で運ばれ病院へ搬送された。

 私を含むデイリースポーツ、スポーツニッポン、東京スポーツの記者は、リングドクターを取材。男性の状態を「頭を強く打ったとかそういうことではなくていわゆる切ったような感じです」と前頭部の裂傷だったことを明かした。傷は浅くバックステージでは消毒と止血のためにガーゼで圧迫する処置を施したという。

 出血の量は「頭だったんで多かったですが、圧迫してすぐに止まりました」と意識はハッキリしており、搬送先の病院でCTやMRI検査の必要性はない見通しを示していた。

 男性が緊急治療を受けた場所は、インタビュースペースと同じ所だった。そのため、セミファイナルに出場した藤波、メインのSareeeら選手は治療に配慮しインタビュースペースでコメントすることを自粛した。

 男性が救急搬送された後に工藤GMがインタビュースペースで取材に応じ、シンが観客を負傷させたことに「私どものセコンド態勢ですとか、そういった部分に不備があったかと思います。本当に楽しみに観戦されたお客様にケガを負わせてしまいましたことは本当に深くおわび申し上げます。すみませんでした。もっといろんな対応策があったのではと思っております」と謝罪した。

 一方でシンについては「みなさんが見たかったシンさんを感じられたと思います」とし「あくまでもケガを負わせてしまったことについては申し訳ない気持ちでいっぱいです」と繰り返し謝罪した。今後はセコンド態勢を増やすなど再発防止に努めることを明かし、負傷した男性には誠心誠意対応することを約束していた。

 

 当事者者のシンは、コメントすることなく会場を去った。

 

 ここまでが会場で起きた「シン観客殴打事件」の一部始終になる。ただ、病院へ搬送された男性の状況は、18日午前8時半の時点では不明。大事には至ってないことを願いながら今後、取材する。 (福留 崇広)

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