1992年10月にテレビ朝日系で放送開始されたドラマ「愛しの刑事」は、石原プロモーションが制作し、同社の看板俳優である舘ひろしが主演した。石原プロの刑事ドラマといえば、「西部警察」や「ゴリラー警視庁捜査第8班」といったド派手なハードアクション路線が有名だが、俳優たちの演技合戦が見どころの人情派の刑事ドラマだ。
(C)石原音楽出版社
本作はバブル崩壊後に制作されたこともあり、予算的な制約あったためか劇中の刑事部屋や取調室、廊下など警察署内のシーンは当時の石原プロの事務所内にセットを組んで撮影されていた。だが、逆に人工的なライトの照明ではない自然光を生かしたライティングにより、リアルな画面になって演出面での効果をもたらした。石原プロの社内に画面を通して触れられることでも、貴重な作品であり、現在でもファンには根強い人気がある。
舘が演じる羽山了刑事は、城西署の刑事防犯課をリードする重要なポジションを担う。
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第1話の冒頭、城西署捜査係の羽山は深夜に「ヤッサン」こと鑑識課のベテラン・川村泰吉(藤木悠)から電話で呼び出しを受ける。羽山が現場に到着すると、川村は何者かに撃たれて死亡していた。やがて川村が3年前の強盗殺人事件を独自に洗い直していた事実が判明。犯行に使われた拳銃も事件のものと一致したが、犯人は逃走中に事故死して捜査が打ち切られていたのだ。3年前の事件がカギを握る見た羽山は、当時妻を殺害された被害者で貴金属商の一ノ瀬貴史(内田直哉)に事件時の状況を聞く。
本作の魅力は、まずはW主演を務める舘と宅麻の見事なコントラストにある。エネルギッシュで際立った個性を放つ羽山刑事に対し、スマートでエリート然とした川村刑事という図式は、バディものの刑事ドラマとしてはある意味定番ながらも、質の異なる2人のカッコよさが際立っている。2人の相性は「水と油」であると劇中でも語られるが、特に父親譲りの優しい性格である川村は、情に脆い性格が裏目に出ることも多い。羽山を演じる舘の個性があまりにも強烈なだけに、宅麻が割を食ってしまいがちだが、その顔立ちの精悍さと際立った声質の良さで存在感を放っている。
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共演者の中では、コメディリリーフ的な存在の中野係長(井上順)の奮闘ぶりが印象的だ。
坂上忍の芝居が見られることも今となっては新鮮で、本作のゲストには「いいとも青年隊」の久保田篤、「欽どこ」でおなじみの斉藤清六、人気アイドルだった北原佐和子、官能的な演技に定評があった水原ゆう紀といった昭和を彩った俳優たちが毎回登場。当時を知る世代にはたまらないドラマとなっている。そんな見どころ満載の「愛しの刑事」が、ホームドラマチャンネルでオンエアされるが、石原プロ作品の中でも根強い人気を誇る本作の魅力にあらためて触れてほしい。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
愛しの刑事
放送日時:5月10日(金)06:00~
放送チャンネル:ホームドラマチャンネル 韓流・時代劇・国内ドラマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります