そこで、今回は『Fate』シリーズが誕生した2004年をピックアップ。この年に発売された人気作やゲーム業界の出来事などを紹介していきます。
2004年最大のニュースといえば10月23日に起きた新潟県中越地震でしょう。震度計による計測で初めて震度7を記録した地震で、多数の死傷者を出す惨事となりました。日本人のボランティアやジャーナリストが、イラクの武装組織に拘束されるという事件が続発したのも、この年です。この件を機に「自己責任論」が大きな問題として取り沙汰されるようになりました。
スポーツでは、この年開催されたアテネオリンピックで日本勢が史上最多となる16個の金メダルを獲得。競泳の男子平泳ぎで2冠に輝いた北島康介選手がインタビュー時に発した「チョー気持ちいい!」は流行語となりました。また、イチロー選手がメジャーリーグの年間最多安打記録を84年ぶりに更新。年間262安打という前人未踏の記録を達成しました。
この年のヒット曲は平井堅の『瞳をとじて』やオレンジレンジの『花』など。
2004年はこんな年でした。懐かしいと思うでしょうか、それとも意外と最近に感じるでしょうか。それでは、この年話題となったゲームを見ていきましょう。
Fate/stay night
発売日:2004年1月30日
機種:PC
販売元:TYPE-MOON
記念すべき『Fate』シリーズの第1作目です。本作が成人向けのノベルゲームとして発売されたのは、よく知られているところです。しかし、3つのルートからなる壮大かつ長大なストーリーは読み応えバツグンで、アダルトゲームの枠を超えた幅広い層の支持を獲得。2006年に最初のアニメ化がされ、家庭用ゲーム機にも移植されるなど、さらに人気が拡大していったのはご存知のとおりです。
7人の魔術師が聖杯を賭けて戦うというバトルロワイアル的なハードな展開、神話や歴史上の人物であるサーヴァントたちをはじめとする魅力的なキャラクター、フルクリアまで数十時間を要する圧倒的なボリュームなど、本作の人気の要因はさまざまですが、あえてひとつ挙げるなら、巧みな伏線の数々ではないでしょうか。
本作はストーリーを読み進めていくことで、驚きの事実が次々に明らかにされていきますが、現在では多くの人が、その内容をご存知だと思います。
ですから、アニメは見たけどゲームは未プレイという人は、今からでもやってみるべきです。主人公たちの心の動きもしっかりと描かれているので、『Fate』という作品をより深く理解することができるでしょう。ちょっとした選択ミスがバッドエンドに直結するなど、フラグの管理がシビアで、ゲームとしてもかなり歯応えがあります。なお、現在プレイするならスマートフォン版やPS Vita版がオススメです。
モンスターハンター
発売日:2004年3月11日
機種:プレイステーション2
販売元:カプコン
こちらの超人気シリーズも2019年で15周年となりました。シリーズ第1作目となる本作はプレイステーション2向けに発売。等身大のキャラクターを操作して、巨大なモンスターと戦うというオリジナリティや、ネットワークを介して最大4人で協力できるオンライン要素が話題になりました。ただ、当時はオンラインプレイがまだまだ一般的ではなく、特定のサービスに加入する必要があるなどネット接続のハードルが高かったこともあって、大きなヒットとはなりませんでした。
とはいえ、リオレウスをはじめとする迫力満点の巨大モンスターや、大剣を振り回したり巨大なボウガンをぶっ放したりする豪快なアクションの数々。
ちなみに、本作の思い出というと右スティックでの攻撃を挙げる人が多いのではないでしょうか。右スティックを前に倒すと前斬り、左右に倒すと回転斬りを繰り出すなど操作方法が独特で、当初はなかなか思うように攻撃が出せず苦労したものです。ところが、シリーズのファンはこの操作に慣れてしまっていて、のちにPSP版が発売された際、ボタンでの攻撃操作にとまどった人が意外といたそうです。今でも実は右スティックでの操作の方が好きという人が、案外いるかもしれませんね。
ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン
発売日:2004年1月29日
機種:ゲームボーイアドバンス
販売元:任天堂
世界累計出荷本数1000万本超えを記録した超ヒット作です。シリーズの元祖である『ポケットモンスター 赤・緑』のリメイク版で、『赤・緑』と同じカントー地方を舞台に、おなじみのポケモンたちが登場。新たなマップ「ナナシマ」をはじめとする、さまざまな新要素も取り入れられていて、『金・銀』のモンスターも仲間にできるなど、『ポケモン』ファンにはたまらない内容になっていました。
特に、シリーズ初となるワイヤレスアダプタを使った無線での対戦・交換機能の導入は画期的な出来事でした。けっこう離れたところにいる相手とも通信可能になっていたので、学校に持って行って、授業中に先生の目を盗んでプレイしたという人もいたのではないでしょうか。また、この作品から主人公が男の子だけでなく、女の子も選択可能になりました。
ちなみに、この年は2002年に発売された『ポケットモンスター ルビー・サファイア』の新バージョン『ポケットモンスター エメラルド』もミリオンヒットを記録。『ルビー・サファイア』も発売から2年経過しているにもかかわらず、年間売上の上位にランクインするなど、『ポケモン』人気健在を印象づける1年となりました。
ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君
発売日:2004年11月27日
機種:プレイステーション2
販売元:スクウェア・エニックス
ご存知、国民的人気RPGの第8作目です。開発を担当したのは、のちに数々のヒット作を生み出すことになるレベルファイブで、プレイステーション2ソフトの歴代1位となる累計出荷本数約370万本を記録するなど、この年最大のヒット作となりました。
最大の見どころは完全3D化されたグラフィックで、キャラクターたちが等身大で描かれ、視点も主人公の後方から見る、いわゆるTPSタイプに変化。それまで『ドラクエ』といえばキャラクターは2頭身のデフォルメキャラで、フィールドも見下ろし型だっただけに、初めてプレイしたときは世界が一気に広がったように感じたものです。
また、「ためる」コマンドで攻撃力をアップする「テンション」システム、複数のアイテムを合成することで新たなアイテムを作り出せる「錬金釜」などのさまざまな新要素も導入。ヤンガス、ゼシカ、ククールという個性豊かな仲間たちも人気となりました。
ちなみに、この年は『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』のリメイク版も発売。こちらも累計出荷本数約170万本を記録するビッグヒットとなっています。
オシャレ魔女 ラブandベリー
発売日:2004年10月
機種:アーケード
販売元:セガ(現:セガ・インタラクティブ)
小学校低学年の女の子を中心に大人気となったアーケード向けのカードゲームです。ラブとベリーという2人の女の子のいずれか(のちに黒魔女ミーシャも追加)を選択し、髪型、服、靴のカードをさまざまに組み合わせて自由に着せ替え。
とにかくファッションの種類が豊富かつ多彩で、2008年6月までにカードの累計出荷枚数が2億7300万枚を記録(※1)。リズムに合わせてダンスをするという音ゲーの要素もあるのですが、ゲーム性はさほど高くはなく、自分が選んだ服を着て踊るラブやベリーを見るのが一番の目的となっていました。低学年の幼児でも手軽に楽しめる内容であったことも本作がヒットした一因と言えるでしょう。
もちろん、服装やメイクなどのセンスもバツグン。ゲーム中に登場するファッションが実際に商品化されるなど、ゲームの枠を超えた一大ムーブメントとなりました。残念ながら2008年9月をもって稼働終了となりましたが、本作は低年齢の女子向けファッションゲームという新たな市場を開拓。のちに『プリティーリズム』や『プリパラ』(いずれもタカラトミー)などが生まれる契機となりました。
※1:数字はセガアーケードヒストリーより
この年はプレイステーション2が円熟期を迎えていて、『メタルギア』シリーズの第3弾となる『メタルギアソリッド3 スネークイーター』(コナミ)、戦国時代を舞台にした『無双』シリーズ第1作『戦国無双』(コーエー:現コーエーテクモゲームス)、人気サッカーゲームのシリーズ最新作『ワールドサッカー ウイニングイレブン8』(コナミ)などがスマッシュヒット。北米を中心に全世界で大ヒットを記録した『グランド・セフト・オート・バイスシティ』(カプコン)の日本版もこの年に発売されています。
塊を転がして、いろいろなものを巻き込んでいく奇抜なアクションゲーム『塊魂』(ナムコ:現バンダイナムコエンターテインメント)、人気ドラマを題材とした『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』(チュンソフト:現スパイク・チュンソフト)なども話題に。また、当時はパチスロシミュレーターが人気を博していて、『実戦パチプロ必勝法!北斗の拳』(サミー)が出荷本数100万本を達成しています。
ファミリーコンピュータの人気作をゲームボーイアドバンスに移植した任天堂の『ファミコンミニ』シリーズも人気を博しました。ファミコンの発売20周年を記念したもので『ドンキーコング』、『リンクの冒険』、『パックマン』、『ゼビウス』など全30タイトルが発売。ことに『スーパーマリオブラザーズ』の人気は絶大で、なんと60万本近い販売本数を記録しました。
そして、この年の年末商戦で最大の話題となったのが、ニンテンドーDSとプレイステーション・ポータブル(PSP)の発売です。折りたたみ式の上下2画面やタッチパネルという新機軸を採用したDS、高いグラフィック性能を持ち、ゲームだけでなく映像や音楽も楽しめるPSPという、任天堂とソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)双方の“らしさ”が集約されたハードだったと言えるでしょう。
ご存知のとおり、ニンテンドーDSはビックヒットとなり、あっという間に売上100万台を突破。翌2005年には『脳トレ』ブームを巻き起こすなど、その勢いはさらに加速していきました。一方、PSPは初回出荷台数が20万台とやや少なめだったこともあり、当初はなかなか販売台数が伸びませんでした。しかし、『モンスターハンターポータブル』シリーズ(カプコン)の登場を機に、こちらも人気ハードへと成長していくことになります。