ゲームを遊んでいるとしばしば目にする「バニーガール」。最近ではスマホゲームの限定コスチュームとして定番となっており、SNSで盛り上がりをみせることもあります。
この、ウサギを模したセクシーな衣装は誰でも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?

実はバニー服の発祥は意外と古く、誕生は1960年……もはや半世紀を超えています。同年公開の映画に「荒野の七人」などがあるといえば、その長さに驚くでしょう。「荒野の七人」を見たことがない人はいるけれど、バニー服を見たことがない人は(おそらく)いないと考えれば、その凄まじさが伝わるでしょうか。

その間、人々を魅了し続けるバニーガール……かくいう筆者も魅了されたひとりです。先日編集者とバニー服についての話になった時「ヒュー・ヘフナー氏の偉大なる功績ですよ!」と熱弁をふるった結果、「そこまでの熱意があるならゲーム×バニーでもしてみましょうか!」となりました。望むところです!

まずはバニー服の特徴に目を向けてみましょう。
バニー服はクラブという特異な状況下で形成されるもの。他の衣装とはまた違った“ストーリー性”を持つのです。これらがバニー衣装を単なる過激な衣装以上の物に押し上げていて、今なお人気である理由のひとつではないでしょうか。

そこで本記事ではゲーム史におけるバニー特集……の隙を縫いながら筆者オススメのバニーキャラを紹介していきます!

◆「バニー×ゲームの歴史」の前に立ちはだかるアーカイブ問題。
バニー服の正式名称は「Playboy Bunny」となります。誕生したのは「PLAYBOY CLUB」のコスチュームとしてです。
1960年代当時「PLAYBOY」は発行者であるヒュー・ヘフナー氏(Hugh Hefner)とともに一世を風靡していました。“スキャンダラスな60年代ハリウッド”といえば、同氏の顔が浮かぶ方も多いのではないでしょうか?

ちなみに、ヒュー・ヘフナー氏が住んだ「プレイボーイ・マンション」はハリウッド一時代の象徴として数々の作品にも登場しており、近年ではタランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などでも描かれました。

テレビゲームが表舞台に現れる前から、バニー服はすでに人々を魅了していたのです! ……と、勢いよく本特集を始めたもののその難しさからさっそく頓挫。筆者はがっつり文学研究をしていたこともあり、「過去の資料を探すのは容易」とタカをくくっていたのですが、正直に言うと、膨大な数のゲームから「バニー登場作品」をピックアップする難易度が高すぎたのです。

理由は複数あって、ゲームの量はもちろん、「どの作品にバニー服が出ているか、プレイするまでわからない」「もちろんリスト化などされていない」という点が非常に大きいわけです。メインキャラの衣装差分なら記憶にあっても、サブキャラまで含めるとお手上げです。


真面目に言うと……ゲームのアーカイブ、ゲーム研究ということへの問題点は「ゲームの多様性」にあります。たとえば文学研究でいうなら関連論文などからキーワードを抽出して関連書籍を検索したり、あるいはあらすじから登場しそうな作品のめどを立てていきます。そうすることで幾分の漏れはあれど網羅することは可能なのですね。

しかし、ゲームはそうはいきません。特に今回は検索対象が「バニーガール」と、ゲームのメインにはなりえないもの。そもそも自由に閲覧できる環境がまだ整っていない。
こういった先行研究の少なさやアーカイブのなさは、ディープなゲーマーやゲーム業界に関わっている方なら直面したことのある問題かもしれません。バニー服の前にも同じ難関が立ちふさがってしまったのです。なので、本稿では筆者の独断と偏見に加え、可愛らしいバニーキャラの画像ありきということをご了承ください。

なんにせよ、60年の歴史を持つバニー服。「バニーガール」という役割に紐づいているので目立ちそうな衣装ではありますが、バニー服と銘打ってはいつつもディティールを変更したものや、バニー服“らしさ”をテイストとして取り入れたものまで様々。

代表的なコンシューマー作品でいえば、『ドラクエ3』の遊び人などが挙げられるでしょう。
イラストで描かれているのはバニー服ではありますが、厳密には「遊び人の服」であって「バニーガールではない」と言えるかもしれません。もちろん、中にはバニー服っぽいだけの衣装も。

同様に、バニー服と銘打っているもののイラストレーターの個性が光る逸品も。たとえば『アリス・ギア・アイギス』などではオリジナルデザインが目立つ仕様になっています。

さらに、フィギュアなどで「バニー姿」になっている作品も多く存在します。たとえば『戦場のヴァルキュリア』ではセルベリアなどがバニー姿になっていますね。
フィギュアでバニーとなる流れはよく見ることなので、こちらの方面を掘り下げると際限がなさそうです。

◆優先順位の低さが解消されて、バニーは一般化しつつある
本特集のため調査を進めていくと“ある結論”にたどり着きました。それは「ゲームにおいてバニー衣装がポピュラーなものになっている」ということ。何を当たり前のことを言ってるんだと思われるかもしれませんが、10年前にはまだ特別なものとされていたバニー衣装は、もはやゲームにおいては定番コスチュームとなっているのです。バニー×ゲームの歴史を振り返る上で、改めてこの事実に気づかされましたのでした。

これほどポピュラーなものになったのにはいくか理由があると思います。まず1つ目は、ビジュアル面の発達により視覚的に「バニーガール」を描写できるようになったという点。

たとえば『ドラクエ3』の「遊び人」は、ドット絵での表現。当然、視覚的な面でのバニー服のデザイン性は薄れて「バニー服という情報そのもの」がメリットになります。これも中々乙なものですが、バニー服としての魅力はやはり半減してしまうでしょう。

『ドラクエ』シリーズで「遊び人」がバニーガールの衣装を着ている理由はあくまで「遊び人」のイメージに沿っているから。「遊び人」の流れから『ドラクエ』にバニー衣装は多いように感じますが、それでも基本的にバニーガールの「衣装差分としての優先順位」は低いものでしょう。

悲しいかな、防具や衣装差分で、たとえば「あぶないみずぎ」などの水着装備が優先されても「バニー服」を優先するゲームは少ないはず。もしバニー推しのゲームがあれば後学のために教えてください。

2つ目は、その優先順位の低さを補う「DLCの登場」です。たとえば『ドリームクラブ』といった「DLCでの衣装差分が重要なコンテンツ」をはじめ、最近では『Little Witch Nobeta』などでもバニー服が用意されています。

ちなみに、Steamのダウンロードコンテンツで「bunny」と検索をかけたところ、現時点で古いバニーDLCは2015年3月31日の『DEAD OR ALIVE 5 Last Round: Core Fighters』。流石です!

であればソーシャルゲームにおいても同じことで、「バニーガールは一般化している」と言えるでしょう。もちろん、バニー服だけでなく様々な種類の服と同時にではありますが……。

さて、これは完全なる筆者の肌感ですが、この数年ソーシャルゲーム界隈でバニー服がよく話題になっている気がします。昨今で話題となったのは『ブルーアーカイブ』や『雀魂』、『NIKKE』など。ブルーアーカイブでのバニーイベントは話題を呼び、第2弾が先日行われました。『NIKKE』でもバニーイベントが開催されましたが、こちらはショービジネスとしてのバニーガールを取り上げており、「衣装差分でないバニーキャラ」が登場したことは喜ぶべきことでしょう。

バニー服が唐突に入ってくる事例もあります。『FGO』では水着イベントのさなか、「アルトリア・ペンドラゴン(ルーラー)」へ唐突に差し込まれたりました。もちろん「カジノ」という文脈の中でですが、意外性があります。

ただ、前述のようにそもそも「PLAYBOY」のロゴである“ウサギ”は性欲が強いというところから来ているもの。当然バニー服にもそういった“ウサギのイメージ”が当てはまります。スキャンダラスな人生を送ったヒュー・ヘフナー氏の「ウサギの衣装」は、かなり“成人向け”と言わざるを得ません。

スキャンダラスで“成人向け”なイメージが強いバニー服というのは、このバックボーンを含めるとやや刺激が強すぎるため、「優先順位」が後に回されていたのかもしれません。しかし、多くのゲームでバニー服が見られるようになってそういったイメージはやや和らいでいるかもしれませんね。

特に20代前半のゲーマーにとって、バニー衣装は特別なものではなく、衣装としてあって当たり前ぐらいの感覚なのではないでしょうか? スマホゲームが普及している中で育ったスマホネイティブな世代は、バニーネイティブとも呼べるかもしれません。

この「衣装差分の増加」の恩恵を受けているのは、もちろんバニー服に限った話ではなく、昨今のゲームではメイド服などをはじめとした多くの衣装が増えています。しかしバニー服のような、発祥当時のデザインが半世紀を超え、そのまま人々に刺さっているというのは驚きしかありません。

バニーガールの生みの親と言えるヒュー・ヘフナー氏はそのスキャンダラスな人生が取りざたされますが、実は今大きな社会的事象となっている「LGBT」の理解者と捉えられる向きもあるそうです。まだ「LGBT」が単語として成立する遥か前となりますが、同氏は同性愛に対する理解をもっていて、社会的に認められるよう様々な活動をしていたことでも知られています。

恐れずに言うと、いま現在これらの問題は良くも悪くも、センシティブなテーマになりました。しかし、バニーガールの生みの親でもあり、「LGBT」の理解者でもあるヒュー・ヘフナー氏の、セクシャルな面での「寛容さ」は、賛否を一切抜きにして賞賛に値するものでしょう。

少なくとも、筆者にとっては「バニーガールの生みの親」として尊敬の対象です。8月2日はバニーの日。これからも様々なコンテンツでバニー服が広まることを願いましょう。ちなみに、8月21日もバニーの日のようです。2つあるとはなんともお得ですね!