人類と犬の付き合いは古く、古代メソポタミア文明やギリシア文明では、発掘された彫刻や出土品に犬が描かれている。
■人と「犬」は縄文時代からの付き合い
日本では、縄文時代の遺跡から埋葬された犬の骨が出土している。埋葬の痕跡から、当時の犬はシカやイノシシを捉えるための狩猟犬としての役割や、食用として屠殺されていた可能性が指摘されている。
犬が純粋にペットとして人間と生活を共にするようになった時期は定かでないが、平安時代の資料には、ペットとしての犬の存在を証明するような記載が散見できる。
室町時代になると外国船によって海外の犬種が輸入され、時の大名や貴族たちに親しまれるようになったようだ。
■「犬」の需要が高まった江戸期
それまで上流階級の娯楽であった犬の飼育は、江戸時代になり社会情勢が安定してきたことで庶民の間にも広がりを見せことになる。徳川五代将軍・徳川綱吉の治世には、中野に「中野御用御屋敷」と呼ばれる犬小屋が設置された。
16万坪という広大な敷地を犬のために開放し、幕府が管理したという。それは犬たちを管理する専門の役職を作る徹底ぶりで、飼い犬だけではなく、野犬や捨て犬も収容したとされている。
Wikipediaより(中野区役所前にある江戸時代の犬小屋を示す銅像)
江戸時代後期、作家の暁鐘成(あかつきのかねなり)は犬の飼育書である「犬狗養畜伝」を作成する。

犬狗養畜伝
この飼育書には犬に与える餌や方法、病気や寄生虫の種類や治療、薬に至るまで様々な詳細が記載されている。
また、犬に対する愛情を説いたり、飼い主の都合で野山に捨てたりせず終生責任を持って飼育することなど、道徳的観点から犬の飼育論を記載している点も特徴的だ。

犬狗養畜傳より
■現代の「犬」人気
ペット需要が豊富な現代では、3世帯に1世帯がペットを飼っている。その中でも犬を飼っている世帯の比率はとても高く、その人気の高さを伺わせる。
一方で、殺処分や捨て犬の問題も存在し、保健所に送られる犬の1.5割以上は飼い主自身からという現状だ。
犬を飼うということは大きな責任が付きまとう。犬の飼育を検討している現代人にこそ、江戸時代の犬飼育書「犬狗養畜伝」が必要なのかもしれない。
犬狗養畜傳 – 国立国会図書館デジタルコレクション
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