今回は、そんな日本民族の風習と蛇の関係性をご紹介したい。
■「蛇信仰」の由来
蛇が信仰の対象となった理由は様々に推測することができるが、有力な可能性として蛇の生態系を上げることができる。他の生き物を丸呑みにする動物食や、牙に備わる毒腺は畏敬の念を抱かせ、成長の過程で行われる脱皮は不死の象徴とされたと考えられる。
また、退化した四肢は男根を彷彿とさせ、生命のシンボルとして崇められたとも。日本では縄文時代の土器に蛇を思わせる文様を確認することができる。
蛇の特殊な生態系が、当時の日本民族の中で徐々に「生」と「死」の象徴として神格化され、信仰の対象となっていった可能性は否定できない。
■「古事記」に残る記載「ヤマタノオロチ」
日本の自然信仰(自然物・自然現象を崇拝、もしくはそれらを神格化する信仰の総称)において様々な形で登場する蛇。
その代表的な例が、「古事記」や「日本書紀」に神話上の生き物として登場する8つの首をもつ巨大な蛇「ヤマタノオロチ」。
越国(現在の福井県敦賀市から山形県庄内地方の一部に相当する地域)に巣食う怪物で、人間の娘を喰らい人々を悩ませていたが、出雲国(現在の島根県東部に相当する地域)の上流に降り立った「須佐之男命(スサノオノミコト)」によって退治されたという神話はとても有名だ。
このヤマタノオロチも蛇信仰の一種であり、河川や山といった自然が、時に起こす人知を超えた驚異を蛇に見立てて神格化した存在と考えることができる。
(蛇窪神社HPより)
■「祭神」としての蛇

日本全国には蛇を「祭神」として祭る寺社が数多く存在する。特に中国・四国地方には「トウビョウ」といわれる蛇の憑物が伝承されており、その祟りを鎮めるために「道通様」(どうつうさま)の名で祀られている。
中でも、岡山県にある「道通神社」は蛇信仰の中心的な神社であり、その期限は1500年代まで遡る。
また、東京の品川にある「蛇窪神社」も蛇を祭る神社である。1300年代に起きた大旱魃(だいかんばつ)に際して行った雨乞いの成果をきっかけに、現在の地に神社を勧請したと考えられている。
鎌倉時代には、社殿の横にあった清水が湧き出る洗い場に白蛇が住んでいたとの言い伝えも残っているほど蛇にゆかりのある神社だ。
この他にも全国には蛇と関わりの深い寺社が数多く存在している。そういった建造物からは、日本民族と蛇信仰に対する歴史や密接な因縁を感じることができるだろう。
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