頼朝「もう、後にはひけぬ……」

治承4年(1180年)8月17日に反平氏の兵を挙げ、にっくき山木兼隆(演:木原勝利)らを討ち果たした源頼朝(演:大泉洋)たち。

時政「これで終わりじゃねぇぞ。
始まったばかりだ」

父・北條時政(演:坂東彌十郎)や兄・北条宗時(演:片岡愛之助)の背中にくっついて必死に戦った主人公の北条義時(演:小栗旬)。

「鎌倉殿の13人」最後に交わした兄・宗時との約束…第5回放送...の画像はこちら >>


いざ鎌倉!源氏の旗揚げ(イメージ)

初戦に勝利した頼朝たちは伊豆を出て、目指すは源氏ゆかりの地、鎌倉。

しかし彼らの前には、相模の強敵・大庭景親(演:國村隼)が立ちはだかるのでした……。

■政子・実衣・りく……女性トリオの掛け合いと八重姫の胸中

大庭の兵3,000に対して頼朝は300、真っ向から戦って勝ち目はないものの、東から駆けつける三浦勢1,000を恃みに東へ進む頼朝たち。

義時は姉の北条政子(演:小池栄子)ら女性たちを伊豆山権現へ護送する任務を任されます。

ぶつくさと文句を垂れる妹の実衣(演:宮澤エマ)と、それをたしなめるようでいて自分もちゃっかりしている“りく(演:宮沢りえ)”の凸凹コンビを横目に、凛然と最善を尽くす政子。


「鎌倉殿の13人」最後に交わした兄・宗時との約束…第5回放送の振り返りと次回のポイント


北条屋敷に別れを惜しみ、ぶつくさと文句を垂れる実衣。それがまた可愛いとの声も

今回は彼女ら3人の掛け合いが見どころの一つ。挙兵前は「読経なんかしても何にもならない」と言っていた“りく”も、いざ夫の時政らが窮地に陥ると真剣に読経するようになった辺り、距離が縮まっていい感じでした。

女性と言えば八重姫(演:新垣結衣)は頼朝との密会を喜びつつ、その危難を伝えるべく北条屋敷へ駆けつけますが、時すでに蛻(もぬけ)の殻。

身分が低いために、これまでずっと下男のような扱いを受け続けてきた八重姫の夫・江間次郎(演:芹澤興人)は「私は、あなたの夫だ」「侮るな!」と不満をぶつけながら、結局はすすり泣きつつ従うやるせなさ。

そりゃそうですよ、自分のことを好きでもない(むしろ見下している)女性を妻に迎えてそれを養うなんて、つくづく伊東祐親(演:浅野和之)の仕打ちが憎らしいばかりです。


■石橋山で見事に惨敗

ところで不満と言えば、頼朝ですよあの態度……初戦の勝利に乗じて勢いをつけようと言うところへやれ18日は殺生がダメとか、いざ石橋山で敗れれば北条をボロッカス……。

時政「あいつぁ大将の器じゃねぇぞ」

確かに今まで調子よく担ぎ上げてきた北条一族に問題がないとは言い切れないものの、担がれた以上は肚をくくらねば総大将として失格です。

一方の大庭は兵力を恃みに余裕しゃくしゃく、景親を支えるのは頼朝を裏切った山内首藤経俊(演:山口馬木也)と初登場の梶原景時(演:中村獅童)。

「鎌倉殿の13人」最後に交わした兄・宗時との約束…第5回放送の振り返りと次回のポイント


歌川芳虎「武者六歌仙之内 鎌倉諸士別当所 梶原平三兵衛尉景時」

景親は文武両道かつ同じ鎌倉一族の景時を頼りにしつつも、どこかとっつきにくく感じているようで、これが後に両者の袂を分かつ遠因となります。

さて、頼朝たちと合流するべく駆けつけた三浦一族ですが、大雨で丸子川(酒匂川)が氾濫、石橋山を目前にして立ち往生。

親友の時政を助けるべく焦る三浦義澄(演:佐藤B作)とは対照的に、アッサリ見捨てようと進言する三浦義村(演:山本耕史)。


状況次第でどっちにもいい顔をしようとする蝙蝠ぶりに不満を持ったのか、和田義盛(演:横田栄司)が近隣にある大庭一族の館を襲撃。これによって、大庭たちに敵対の意思を示してしまいました。

「鎌倉殿の13人」最後に交わした兄・宗時との約束…第5回放送の振り返りと次回のポイント


大庭景親(左)と北条時政(右)の挑発合戦。すぐカッとなってしまった時政は……(イメージ)

結局、三浦は来ない……何とか山中におびき寄せてゲリラ戦に持ち込もうと挑発を試みた時政でしたが、逆に挑発されて無謀な突撃を敢行。

背後からは伊東祐親の300騎が迫り、挟み撃ちにする予定が挟み撃ちにされてしまった頼朝たちは惨敗を喫します。

■敗北の逆境に仲間割れ寸前

宗時「皆よく戦った。
三浦の助けもなくここまで互角に戦えたのは見事だ」

時政「これはもう勝ったも同然。のう婿殿」

頼朝「どう考えても負けておるではないか!」

……いやはや、北条父子のけなげな励ましを察してあげなさいよ。むしろ責任を痛感している部下を慰め、叱咤激励するのが大将の務めというものです。

「鎌倉殿の13人」最後に交わした兄・宗時との約束…第5回放送の振り返りと次回のポイント


洞窟に隠れる頼朝ご一行様。歌川国芳「源頼朝石橋山旗上合戦」

頼朝「だからわしは不承知だったのだ。お前たちのせいだ!調子のいいことばかり言いおって。
北条を頼ったのが間違いであったわ!時政、なんとかせい。わしはここで死ぬわけにはいかんのだ。命に代えてわしを守り抜け!」

よくもまぁこうまで利己的なことが言えたものだ……怒りに震える時政の手を抑える義時。宗時の「まだ勝負はついておりませぬ」というセリフの、本当にけなげなこと。

ちなみに、頼朝が大袖に刺さった矢を忌々しげに抜くと、そこには乳兄弟「山内首藤滝口三郎経俊」の名前が。

頼朝「山内首藤……あいつめ!」

これで第2話からのフラグを回収。
この後のエピソードもやるのか、一応覚えておきましょう。

さて、気を取り直して再起を期するためには甲斐で挙兵した武田信義(演:八嶋智人)の力を借りるよりありません。しかり頼朝はプライドが許さぬと拒絶します。

「鎌倉殿の13人」最後に交わした兄・宗時との約束…第5回放送の振り返りと次回のポイント


甲斐源氏の棟梁・武田太郎信義。菊池容斎『前賢故実』

頼朝「あいつに頭を下げるぐらいなら今すぐ自害する!」

盛長「佐殿!」

ここでいつもは温厚な安達盛長(演:野添義弘)が初めて頼朝に対して声を荒げて諫めました。

頼朝「……任せる」

頼朝は烏帽子からおもむろに持仏(お守り用の小さな仏像)の観音像を取り出し、洞窟内に安置します。

土肥実平(演:阿南健治)「かわいい観音様でございますな」

髻(もとどり)の中へ結いこんでいた持仏を、烏帽子も脱がずにどうやって取り出したのだろう……なんて野暮はやめておきましょう(なお、この時に自害を覚悟して髻を根元からバッサリ切っています)。

頼朝「こんなことならご本尊を持ってくるべきであった。誰か取ってきてくれ。誰か!」

宗時「私が参りましょう」

頼朝「待て待て。ざれ言じゃ」

宗時「……すぐに戻ります」

■坂東武者の世をつくる……それまでは辛抱しようぜ

ついに宗時が怒りました。第1回から、ずっと頼朝を担ぎ上げ、北条を(独断も込みで)引っ張って来た宗時が。

宗時「この戦、必ず勝ちます」

見てろ。絶対勝ってみせる。宗時は自分と頼朝に言い聞かせ、工藤茂光(演:米本学仁)と共に伊豆を目指します。

武田の援軍を要請しに甲斐へ向かう時政・義時との別れ際、宗時は義時にこう言い残しました。

宗時「俺はな、実は平家とか源氏とか、そんなことどうでもいいんだ」

義時「兄上……」

「鎌倉殿の13人」最後に交わした兄・宗時との約束…第5回放送の振り返りと次回のポイント


頼朝公を神輿に担ぎ上げて「坂東武者の世」を目指した宗時(イメージ)

宗時「俺はこの坂東を、俺たちだけのものにしたいんだ。西から来たやつらの顔色をうかがって暮らすのはもう真っ平だ。坂東武者の世をつくる。そしてそのてっぺんに北条が立つ。そのためには源氏の力がいるんだ。頼朝の力がどうしてもな」

宗時「だから、それまでは辛抱しようぜ」

あの忌々しい頼朝が何と言おうが……そんな思いを込めて義時の肩を叩き、「じゃあ行ってくる」と去って行く宗時の背中……それが最後の姿でした。

後に甲斐への道中、頼朝に愛想を尽かした時政が「このまま逃げちまうって手もあるよ」「頼朝の首級を持って行けば、(大庭も)赦してくれるんじゃねぇかな」などと口走ります。

しかし義時は「それまでは辛抱しようぜ」という兄との約束を守るため、父を諫めて思い留まらせ、再起を期して任務を遂行するのでした。

■次回「悪い知らせ」見どころとポイント+α

さて。とかく負け戦さとは気分が荒むもので、そこをどれほど持ちこたえるかが再起のカギと言えるでしょう。

後白河法皇(演:西田敏行)「(頼朝の夢枕で)お前には神仏がついているんだからさ。強気でいけよ。お前しかいないんだから。なぁ、なぁ、なぁ……!」

まぁしかし、谷あればこそ山も高くなるもので、ここから物語は盛り上がります。

来週2月13日(日)放送の第6回「悪い知らせ」……頼朝の「ざれ言」によって宗時が喪われた哀しみから立ち上がる義時。

「鎌倉殿の13人」最後に交わした兄・宗時との約束…第5回放送の振り返りと次回のポイント


坂東きっての強豪・上総介広常。彼を味方にできるか否かが、再起のカギとなる。歌川芳虎「大日本六十余将 上総介広常」

そして武田信義や上総広常(演:佐藤浩市)、畠山重忠(演:中川大志)など、頼朝の挙兵が波紋を広げた坂東の各勢力……その思惑が交錯する展開に、胸が熱くなりますね!

【余談】ドラマ後の「鎌倉殿の13人紀行」、今回の舞台は石橋山と政子たちが匿われた伊豆山神社。

そして本編には登場しませんでしたが、激闘の中に散華した佐奈田義忠(さなだ よしただ)の活躍と彼を祀る佐奈田霊社に言及。100%割愛されると思っていただけに嬉しかったです。

源平合戦にはこうした勇士がたくさん登場する(けど、ドラマでは割愛されてしまう)ので、是非とも興味を持って調べて欲しいと思います。

※参考文献:

  • 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
  • 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan