ついに源頼朝(演:大泉洋)の浮気が発覚。怒れる北条政子(演:小池栄子)による「後妻(うわなり)打ち」が炸裂しましたね。その破壊力は予想外だったようですが……。
燃え上がった炎は、政子の怒りか
頼朝「恐ろしすぎる。ここまでするか?」
政子「肝心なのは夫の裏切り!」
りく「咎めるべきは夫のふしだら!」
政子「病がちな我が子を放って側女と会っていたなんて、許せることではございませぬ!」
りく「今すぐ御台に頭をお下げください!」
頼朝「身の程をわきまえよ!下がれ!」
時政「わしの大事な身内にようもそんな口を叩いてくれたな!たとえ鎌倉殿でも許せねぇ!」
頼朝の逆ギレ(宗親の髻を切る暴挙)に時政が怒り、鎌倉を去る有名なシーン。時政の「言っちまった」の後ホッとしたような笑いを浮かべていたのが印象に残ります。当然激怒しているかと予想していたのに、ちょっと意外でしたね。
あぁいう穏やかな笑いを浮かべて決心した人間を翻意させるのはなかなか難しいものですが、小四郎こと江間義時(演:小栗旬)はどのように何とかするのでしょうか……。
さて、今回はそんな第12回から上総介広常(演:佐藤浩市)・源義経(演:菅田将暉)・三浦義村(演:山本耕史)+αをピックアップ。それぞれの見せどころを振り返りたいと思います。
■広常、相変わらず頼朝大好きをこじらせる
坂東随一の実力をもって、鎌倉でも御家人筆頭を自負している上総介広常。何でも自分が一番じゃないと気が済まない彼は、相変わらず憎まれ口が多く、大江広元(演:栗原英雄)にマークされます。
頼朝「上総介殿には、引目役も頼む」
広常「喜んで、お引き受けつかまつろう」
この時、ちょっと口の端が緩むところが可愛いですね。うん、とても可愛い。
広常「武衛、どうせなら乳母(めのと)も俺やるよ」
何が「どうせ」だ、やりたくて仕方ないくせに……そんな頼朝大好きをこじらせまくった広常は、それゆえ非業の最期を遂げるのですが、それはまたのお話し。

多くの御家人たちに埋もれ、不満げな広常。歌川国芳筆
これで今回の出番は終わりかと思ったら、隠れ家を叩き出された亀(演:江口のりこ)を引き取らされるのでした。
広常「いつまで預かってりゃいいんだよ」
義時「今、引き取り手を探しているところです」
広常「俺に色目使ってきやがった。あぁいう女は好かねぇ」
義時「早急に(苦笑)」
劇中に言及はないものの、頼朝の為だから……と亀を引き受けたのであろう広常。そんな広常の心情を承知で面倒な案件を押しつけた義時の成長?ぶりと信頼関係を感じる一幕でもあります。
また、いつか上洛した時に備え、公家たちにバカにされぬよう手習いを始めるのも(上洛したい意向を示している)頼朝大好きの一環と言えるでしょう。
小四郎と広常の関係が、いつまでも(少しでも長く)続いて欲しいと願うばかりです。
余談ながら広常の「あぁいう女は好かねぇ」という一言に、胸のつかえがとれた視聴者は、きっと筆者だけではないはず(よね?)。個人的には今回の「その一言を待っていた」ランキング第1位に輝いています。
ホント鎌倉殿は、あれ(牧の方=りくなんかより、よほど女狐)の何がいいんでしょうか。是非とも伺ってみたいものです。
■義経、ほとばしる青春のフラストレーション
平家追討の戦いに身を投じるべくやって来たのに、出陣の機会がなくモヤモヤしている源義経。
安産祈願に奉納する神馬を曳く役を渋ったエピソードの元ネタは『吾妻鏡』養和元年(1181年)7月20日条。
鶴岡若宮(現:鶴岡八幡宮)宝殿上棟式で大工に下賜する馬を曳くよう命じられたところ、義経は「(馬を二人一組で曳く上で)自分の身分に釣り合う者がいないから」と断りました。
すると頼朝は「畠山重忠(演:中川大志)らもやっているのに、卑しい役と思って嫌がるのか」と叱りつけ、義経は恐縮して役に当たったということです。

結局、神馬は誰が曳いたのだろうか(イメージ)
一方の大河ドラマでは頼朝が「やはりこういうものは見栄えが大事だからな」とフォローを入れますが、やれ馬の扱いが下手とかくしゃみが出るとか言い訳を連ねる義経。
頼朝「安産祈願が不満か」
義経「兄上は本当に私を跡継ぎと考えてくれてるのだろうか」
頼朝に嫡男が生まれたら、自分の立場がなくなってしまうことも、役目に不服を唱える一因と考えられますね。
義時「鎌倉殿は武人としての九郎殿の才に一目置いておられます」
政子「必ず鎌倉殿のお役に立つ時が来ます……(義経の手をとり)九郎殿、どうか」
姉弟そろって懸命に義経をフォローする義時と政子の姿に、北条ファミリーの温かさが感じられますが、その温もりは義経に伝わるでしょうか。
そんなフラストレーション(不満)が溜まっていた義経は、牧宗親(演:山崎一)の「後妻打ち」に興奮してしまいます。

今回大暴れした弁慶。歌川国貞筆
義経「武蔵坊、派手に行け!」「威勢よくやれ!」
ここぞとばかりに感情のありったけをぶつけたのでしょうね。
■義村、亀を奪って頼朝を超えられるか
義村「いっそ俺の女になるか」
亀「悪くない(たくましい胸筋にふれる)」
義時「女なら誰でもいいのか!」
義村「誰でもではない。頼朝の女だ。その時初めて俺は……頼朝を超える」
義時「難しすぎてもう分からん」
回を追うごとにイケメンぶりを強調、一部で「カッコよすぎてもはやギャグ」なんて評判も立っている三浦義村。
八重姫(演:新垣結衣)にフラれたってビクともせず、今回も女漁りに余念がありません。
初登場からクールで野心的、そんな義村は頼朝の女である亀を奪い取ることで、頼朝を超えたいようです。

どんな時でも女漁りに余念がない色男・義村(イメージ)
友の想い人であろうと、主君の愛人であろうと義村を止める理由にはなりません。
しかし頼朝を超えたから何なんだというツッコミと、それって亀自身の個性や人格はどうでもいいと言っているようなもので、随分と失礼な話しではないでしょうか。
一方それが分からぬでもなかろうに「悪くない」と即答する亀も亀です。何がしかの魅力や見込みのある男なら、頼朝だろうと義村だろうと、それこそ赤の他人だろうと「悪くない」と言うのでしょう。
まぁ、お互いに相手そのものを向き合おうとする誠実さなど欠片もないようですから、お似合いと言えばお似合いのカップルなのではないでしょうか。
こういうドライ極まる人間関係が、今どきの流行りなのかも知れませんね。
言うまでもなく、このやりとりはフィクション。史実『吾妻鏡』だと亀は大多和五郎義久(おおたわ ごろうよしひさ。三浦義澄の弟)の館へ逃げることになります。
■終わりに
近ごろ御台所様とちやほやされる政子に嫉妬、対立から後妻打ちをそそのかしたりく(演:宮沢りえ)。
それが頼朝許すまじの一念から結託、共同戦線を張って頼朝を問い詰めていく様子は実に痛快でしたね。
他にも実衣(演:宮澤エマ)が第1回の「ぞっこん」以来に見せた「(頼朝の浮気相手は)どこの誰」や、八重姫のことになると人が変わったようなポンコツぶりを見せる義時など、個性豊かな北条ファミリーを堪能。

普段はとぼけていても、ここ一番家族のためには物申す時政(イメージ)
家族を守るここ一番ではハッキリ物申す時政はじめ、それぞれに家族愛を感じられて、兄弟間でもいがみ合う源氏ブラザーズと対照的です。
次週4月3日(日)放送の第13回は「幼なじみの絆」。幼なじみとは誰と誰なのか、また第1回に言及されて以来の登場となる木曾義仲(演:青木崇高)の存在も気になるところ。
ドタバタ夫婦劇場から源平合戦へと舵を切り直していく転換点、ますます注目ですね!
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月
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