■健康は「食」と「予防」から

今でこそ科学が発達して、「食」と健康がどのような関係にあるか、詳らかにされています。

しかし江戸時代にも、科学的知見は今ほど優れていないものの、「食は健康に通じる」という思想がありました。


それは庶民の食生活からも、また有名な貝原益軒の『養生訓』からも読み取ることができます。

まず、江戸幕府は庶民が平等に医療を受けられるように療養所を設け、食生活の管理に力を入れていました。

そこで出される味噌汁の塩分は控えめでした。また、当時の江戸っ子に人気だった「倹約のおかず番付」というランキングを見ると、沢庵や梅干し、きんぴらごぼうや煮豆など、現代でも「おふくろの味」といわれるようなものが多くランク入りしています。

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昆布豆

さらに、当時の庶民は一日三食食べていましたが、栄養バランスにも気を配っていました。

長崎にも療養所が設けられていましたが、ここは大陸からの疫病の入口になることから、特に衛生面で注意していたといいます。


夏の暑い時期には、子持ちの魚(つまり卵を含んでいる魚)や傷みやすい魚、水分を多く含むきゅうりや梨など、腐りやすく菌を持ちやすいものは持ち込みを禁止されていました。

現代でも通じる内容ばかり!儒学者・貝原益軒の『養生訓』に見る健康の秘訣とは?


水分をたっぷり含むきゅうり

つまり、治療だけではなく「予防」の観点も存在していたということです。

この、「予防」の観点から江戸の人たちがよく読んでいたのが、先にも挙げた『養生訓』です。

■現代に通じる『養生訓』

現代でも通じる内容ばかり!儒学者・貝原益軒の『養生訓』に見る健康の秘訣とは?
『養生訓』(Wikipediaより)

『養生訓』は8巻にまとめられており、飲食・喫煙・入浴・薬の服用などさまざまな分野に関して記されています。

いくつか見ていきましょう。

・過食は避け、自分に合った適度な運動を毎日行う
・旬のものを食べる
・食事は薄味にして、濃い味のものや脂っこいものは食べすぎない
・塩分の少ない食事をする
・病気になってから治療するのではなく、病気になることを防ぐ
・身の回りを清潔にする
・高齢になってからは無理をしない

今の時代でも十分通じる内容ばかりですね。
医学的・科学的知見が今ほど発達していなくても、こういったことは江戸時代の人々はしっかり理解していたのです。

益軒は、特に食事には注意を払っていたようです。彼は福岡藩の武士の子として生まれましたが、幼少期は体が弱かったため、体を動かすよりも学問に没頭する機会の方が多かったようです。

それで自分の身体のことについて注意を払うことが多かったのでしょう、彼は医者としても活躍しました。

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貝原益軒(Wikipediaより)

亡くなったのも85歳と、当時としてもかなりの長生きでした。こういう人が著者なので、今でも『養生訓』に書かれていることはとても説得力があります。


江戸時代のように、食事も暮らしも質素だった時代でも、さらなる質素さが健康長寿の秘訣だとされていました。こうした事柄は、いつでも食べ物が簡単に手に入る現代の私たちに大切なことを教えてくれますね。

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